晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

御嶽山 残雪と青空と 2009.06.07

f:id:ikuyayuuki:20210814073904j:plain

 剣ヶ峰より


<メンバー>

サークル

 

<山域>

 

<コース>
田の原~剣ヶ峰~お鉢巡り~二の池~剣ヶ峰~田の原


 6月の御嶽山はこれで3度目である。雪渓が未だ谷を埋めるこの時期は梅雨前線の影響で雲海が発生しやすく、青空に恵まれればすばらしい景観を約束してくれる。登山口が標高2300mにあり、日帰りが充分に可能な事も天候が不安定な今の時期にあっては大いに助かるところだ。過去2回のすばらしい経験を今度は仲間にも味わってもらおうと山行を企画した。

 

 アクセルを目いっぱい踏み込んでも時速20kmがやっとの勾配を、目が回りそうなヘアピンカーブをこなしながら何とか登り、田の原に到着したのが22時。すぐに車中泊のひとになる。

 夜の2時半頃、エンジンの音がした。隣の車で寝ているKさんだ。シュラフを持ってきておらず寒さに耐え切れなくなったのだろう。3年前の私も同じ経験をした。

 

 翌朝は3時半起床、4時出発。もう夏至が近いので4時でも充分明るい。空を見上げると天の予感。まだ眠っている体に発破をかけて参道の砂利道を歩き始める。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073813j:plain

日の出前に出発

 

 最初はほぼ水平に近かった参道もじわりじわりと傾斜が付いてきて、大江観音、あかっぱげ辺りでは本格的な登りになってきた。体の方がそろそろ苦しくなってくるのだが、ちょうど朝日が辺りを赤く染めだしたので、テンションもいっきにアップ。御嶽山は正面に視界いっぱいに広がり、振り返れば中央アルプスが雲の間に浮かんでいる。高山に来たんだと改めて実感。5時に金剛童子到着、鐘を五つ鳴らす。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073817j:plain

太陽が昇ってきた

f:id:ikuyayuuki:20210814073821j:plain

荘厳な風景

 

 8合目を過ぎると雪渓が現れ、王滝頂上山荘がはっきりと分かるようになる。まだ朝早いので雪面は堅いが前日のトレースがあるのでアイゼンなしでも十分に登ることができる。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073827j:plain

雪渓を登る

f:id:ikuyayuuki:20210814073831j:plain

雪の感触は久し振り

 

 何気なく前を見ると・・何かいる?後ろを行くNさんが双眼鏡を持っていたので見てもらうと、ライチョウ!ちょうど冬毛から夏毛に生え換わり途中のハイブリッド状態。縄張りを見張っているのか、近づいても逃げようともせず、じっと周囲を睨んでいる(様に見える)。ゆっくり写真に撮らせてもらい、ライチョウに別れをつげ、王滝頂上を目指す。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073835j:plain

ん、何かいるぞ

f:id:ikuyayuuki:20210814073839j:plain

ライチョウに会えました

 

 王滝頂上山荘はずっと見えているけれどなかなか近づいてこないのは展望のいい高山ならでは。それでも足を一歩一歩動かしていると景色はどんどん素晴らしくなる。背後には中央アルプスの峰々とその向こうには富士山も見える。森林限界を超え、火山岩でごろごろの登山道を登り、王滝頂上に到着。ここで小休止。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073843j:plain

いつの間にか木が消えた

f:id:ikuyayuuki:20210814073847j:plain

王滝頂上到着

 

 休憩を終えたら一気に剣ヶ峰を目指そうという事で八丁だるみの方向へ進んでいく。あたりは硫黄の匂いが漂い、蒸気をあげている噴煙孔も見える。するとその時、頭上で爆音が響いたかと思うと、大型ヘリが八丁だるみに着陸し、ばらばらと人が下りて来て、剣ヶ峰方面へ登って行く。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073851j:plain

ヘリコプターが

 

 ん、こんなところへヘリで登って来る?と不思議に思っていたら、またすぐに第2便が飛んできた。今度の乗客は王滝頂上の方へ向かっていく。どうやら小屋明けのスタッフのようだ。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073855j:plain

何度も行き来している

 

 ゴロゴロ石の転がる斜面を登り、立派な石段を上がるとついに剣ヶ峰頂上に到着。田の原を出発して3時間、まだ7時だ。目の前にはまだ雪で埋まった一の池、二の池が広がり、遠くには乗鞍、北アルプスまで臨むことができる。適度に雲海が広がっているのも景色にアクセントをつけている。ああ、いい景色。
まだまだ時間もある事だし、これからどうしよう。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073900j:plain

剣ヶ峰までもうすぐ

f:id:ikuyayuuki:20210814073904j:plain

二の池の向こうに乗鞍、北アルプス

f:id:ikuyayuuki:20210814074026j:plain

パノラマ

 

 山頂からの絶景をしばらくの間独占し、記念撮影などしながら大休止。C君が人数分のタイヤキを持ち上げてくれたので遠慮せずにいただく(若いのにエライ)。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073908j:plain

いいなあ

f:id:ikuyayuuki:20210814073920j:plain

記念撮影

 

 ヘリコプターはひっきりなしに荷を揚げ、空ドラム缶などの不要物を下ろしている。これを見ていると山小屋のカップ麺が高価なのにも納得。このまま引き返すのも勿体ないのでお鉢めぐりをすることにする。ちょうど稜線上の雪はほとんど消えており、危険はないだろうとの判断。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073912j:plain

ヘリコプターが頻繁に

 

 神社の裏手から溶岩の岩場を下りていくが、ペンキ印もあって危険な箇所は無い。お鉢の淵はまだ誰も歩いていないようで、ふわふわの土の感触が気持ちいい。雪が解け残っている境界線を歩くと、何だか砂浜の波打ち際を歩いているように見える。

 多少のアップダウンはあるものの、順調に鉢の淵を時計回りに歩いて行く。北西方面に目をやると白山がうっすらと浮かび、北東からは乗鞍、北アが剣ヶ峰からとはまた違った角度で見ることができる。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073932j:plain

お鉢巡りスタート

f:id:ikuyayuuki:20210814074043j:plain

一の池パノラマ(クリックで拡大)

f:id:ikuyayuuki:20210814073936j:plain

青空が美しい

f:id:ikuyayuuki:20210814073941j:plain

中央部が溶けだした一の池

 

 稜線が二の池のカルデラに向かって下りていく辺りで、登山道を雪がふさいでいる。トラバースするほうが怖いので、一気にシリセードで降りていくことに。こんな事もあろうかとヒップそりを持ってきて正解だった。鈴鹿では考えられないロングコースを一気に下っていくと気分爽快。標高が高いせいか空気抵抗が少なく、いつもよりスピードが出たかも(これは冗談)。調子に乗ったC君は加速がつきすぎて縦に2回転してしまった。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073945j:plain

シリセードも久しぶり

 

 一の池の真ん中は地熱の影響か雪がシャーベット状に溶け出していた。この水が高山植物を育み、麓の渓谷を刻むのだろう。今年は雪が少ないようだが大丈夫なのだろうか?と少し心配してしまう。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073949j:plain

大丈夫かな

f:id:ikuyayuuki:20210814073954j:plain

二の池

 

 二の池へも一気にシリセード、この時期の高山、シリセードも面白いなあ。来年は涸沢にヒップソリを持って行こうかなんて考えてしまった。
 
 二の池に映る剣ヶ峰を見られるかと思ったが、まだ雪が融けておらず雪原状態。いい時間になってきたので下山に取り掛かる。いったん、剣ヶ峰に登り返し、王滝頂上へ向かう。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814073958j:plain

ここもシリセード

f:id:ikuyayuuki:20210814074003j:plain

剣ヶ峰登り返し

 

 時間は9時半位。気温が上がってきたせいか、田の原辺りから入道雲が沸き立ってきた。小屋のスタッフの人たちもヘリが飛べるかどうかヤキモキしているようだ。王滝頂上からは半分ガスの中を下ることになる。朝早く登っていてよかったね。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814074007j:plain

雲が湧いてきた

 

 グリセードで雪渓を滑り、あっという間に田の原に到着。朝、7時位に出発した人たちとすれ違うと何故だか優越感に浸ったりなんかする。やっぱり早起きは三文の徳だ。

 

f:id:ikuyayuuki:20210814074017j:plain

下りはガスの中

 

 帰りは麓の温泉で汗を流し、国道19号線沿いの手打ちそば食べて解散。梅雨入り前の貴重な晴れ間、最高のコンディションで山行できて本当にラッキーだった。参加メンバーの日頃の行いの良さに感謝の一日だった。