晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

時山から保月、鍋尻山 北鈴鹿廃村探訪 2009.04.05

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保月の廃屋


<メンバー>

サークル

 

<山域>

 

<コース>
時山~五僧~保月~鍋尻山~岳の峠~妛原~今畑
 
 所属するサークルでは今年、鈴鹿の分割縦走を企てている。北は霊仙山から南は油日岳を十数か所の区間に分割して縦走する計画。どんなコースになるかはリーダーの腕の見せ所。今回は我がサークルの会長が霊仙山麓の河内から時山までの間を案内してくれる。この区間は私も未踏の区間であり、非常に楽しみだ。

 

 時山からさらに奥に車を進めて薮谷橋からスタート。奥の五僧まで林道が貫通したらしいが、車道を歩くのはつまらない。今回は昔の鈴鹿の山の民が歩いた道を極力辿る方針だ。林道から離れ、牧田川沿いの旧道を歩けば毘沙門谷出合の木橋が見える。ここには現役の炭焼き窯があり、昔の鈴鹿の風景が残っている貴重な場所だろう。

 

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毘沙門谷出合

 

 毘沙門谷出合を過ぎると道は急に怪しくなる。石組の道が残っているのだが、崩壊箇所が多く、その度に川床へ下り渡渉したり倒木をくぐったり。まるで障害物競走の様。

 

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ところどころ崩壊している旧道

 

 うっそうとした杉の植林の暗い谷を歩いていると、昔はたくさんの人が往来したのが信じられない程の寂しさだ。何度か道型を見失いながらも峠を詰めて行くと、真新しいガードレールを備えた立派な林道が見えてきた。ほぼ自然に帰りつつある旧道との対比が何とも言えない。

 

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昔の道型と立派な林道

 

 五僧峠に到着。昔は美濃と近江を結ぶ間道として重要な役割をになっていたようだ。歴史の舞台にもなった峠には、今は使われなくなった廃屋が2軒とセンターライン付きの真新しいアスファルトの道路が印象的だった。

 

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歴史のある五僧峠

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センターライン付きの立派な道路

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五僧の廃屋

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まだ生活の跡が残る

 

 林道開通前の姿を知っているリーダーはその変貌ぶりに驚いている。道の右側の古い道型を辿ってアサハギ林道へ下りる。
 

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古い道型を辿ってアサハギ林道へ

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アサハギ林道

 

 アサハギ林道に沿って延々と保月までの道を歩く。冬は雪で閉ざされるであろうこんな山奥に林道を作ったエネルギーにはただ驚くばかり。ただ通る人も無く、維持していくだけでも大変なこの道にいったいどれだけのり価値が残されているのだろうか。谷底には不法投棄のごみが散乱していた。これも林道が出来たせいなのか。

 

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長ーい林道歩き

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ヤママユガの繭

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目を覆いたくなる不法投棄のゴミ

 

 アサハギ林道を更に登って行くと保月の集落に到着。保月は今まで見た鈴鹿の廃村の中では一番規模が大きくてびっくりする。昭和40年代までは300人近い人たちが暮らしていたらしい。朽ちている廃屋もあるが、まだ手入れされており、住んでいる人がいると思われる家屋も立っている。村の中心にあるお寺も立派で、本堂前には新しい花が供えてある。ここでお昼御飯。

 

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保月の集落

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お寺の境内でお昼

 

 お昼御飯のあと、すぐ近くの廃屋の中を覗いて見る。誰かに荒らされたのか中はごちゃごちゃになっているが、壁に洋服が掛けてあったり、テレビや洗濯機が置いてある。天井には蛍光灯がぶら下がっており、ここに人の営みがあったのはそれほど昔では無い事がわかる。

 

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廃屋

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廃屋の中

 

 お腹がいっぱいになったら鍋尻山へ向かう。その名の通り鍋を伏せたような形の山で、なだらかなカレンフェルトの台地をゆっくりと高度を上げて行く。足もとは石灰岩質の山特有の粘土場の土で、昨日雨でツルツル滑って苦労する。かろうじて咲き残った福寿草に目を奪われていると、いつの間にか背後には北鈴鹿の大展望が広がっていた。

 

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鍋尻山へ

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広葉樹の植林をしていた

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花を終えた福寿草

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咲残り

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烏帽子、三国、御池の展望

 

 鍋尻山の頂上は予想に反してたくさんの人出賑わっていたので早々に退散。岳の峠へ向かってこれまたツルツルの斜面をおっかなびっくり下って行く。途中の斜面は気持ちのいい二次林で正面には霊仙山西南尾根がバーンとかっこいい姿を見せている。

 

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いい眺め

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岳の峠へ気持のいい二次林

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霊仙山が迫る

 

 岳の峠は広々とした気持のいい平坦地。こんなところでテント泊したら気持ちがいいね、なんて話ながらちょっと休憩。この後はいよいよゴールである妛原に向かって尾根の急降下だ。

 

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岳の峠

 

 降下に使う権現谷とエチガ谷に挟まれたこの尾根は、昨冬に遭難騒ぎがあったらしい。両側は激しくお落ち込んでいるが踏み跡もしっかりあり、無雪期に歩くと何でこんなところで滑落?と思ってしまう。今回の山行も終盤に差し掛かっているので、うっかり転んだりしないよう集中して歩く。足元には名残りのミスミソウがポツンと咲いていた。 
 

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河内へ下りる

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咲残りのミスミソウ

 

 妛原集落に到着したのはまだまだ早い時間だった。やっぱり人が住んでいる集落は廃村とは雰囲気が違う。ぽかぽかとした陽気にサラサラと川のせせらぎ。都会育ちの私もなんだか懐かしいと感じるのはおかしいだろうか。

 

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妛原集落

 

 まだまだ時間があるので、次の区間のスタート地点である今畑まで歩く事にする。福寿草の盛りは過ぎ、もうあまり人がいないだろうと思っていたが、今畑登山口は車でぎっしりと埋まっていた。バスツアーや広島、石川といった遠距離ナンバーも目立つ。みんなもう少し早く来ればいいのに。 

 

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車でぎっしりの霊仙登山口

 

 再び妛原に戻り、デポしてあった車で藤原まで戻り、アタントで反省会。今回のコース、目立ったピークを踏むわけではないが、旧道を歩いて昔の集落を辿るなかなか趣のあるコースだった。