晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

黒部五郎~双六縦走② アルプスは今日も雨だった 2006.07.29

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青空が広がる過程(黒部五郎岳より)


<メンバー>

サークル

 

<山域>

 

<コース>
2日目:太郎平小屋(泊)~北の股岳~黒部五郎岳~黒部五郎カール~黒部五郎小屋(テント泊)

 

 二日目、天気予報では午前中が雨のピークと言っていたので、出発を少し遅らせてAM5:00起床。下界にいるときよりもぐっすり眠れて、気分は上々。しかし、窓を叩く雨の音が聞こえる。今日は一日合羽を着て歩かなければいけない。山小屋の朝は出発の身支度をする人でごった返している。天気など関係ないようだ。

 

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小屋の出発風景(外は雨)


 合羽を着込み、ザックカバーをつけて完全防備で出発。既に明るくなっているが、雨のせいであたりは真っ白。視界は十数メートルで展望が効かず、イマイチアルプスに来たような気分にならない。

 

 

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 お花畑も雨の中

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薄いピンクの石楠花

 

 途中のお花畑は美しいが、いかんせんこの天気。ブルーな気分になる。時折、雨足が弱まり、ガスが晴れる気配がするが、直ぐにガスってくる。

 

 なだらかな尾根のアップダウンを繰り返していると、だんだん黒部五郎岳が近づいてきた。
               

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振り返っても雨

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ガスの中、黒部五郎岳


 黒部五郎岳は大昔、氷河に削られて出来た「カール」が見事だというが、今歩いている方向は、その背中から登って行くので全容は見えない。

 

 雨がザックに徐々にしみ込み、背中がだんだん重くなる・・。足取りも重くなり、5分登っては息をつくというテイタラク。それでも何とか「肩」の部分に到着。

 

 ザックを下ろし、休憩していると空の一角が何だか明るくなってきた。そうこうしていると見る見る青空に変わり、それがだんだん広がってくる。雲の間から山々が顔をのぞかせ、一気に展望が広がる。メンバーからは歓声があがる。

 

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お、青空が広がってきた

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ガスが晴れると

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展望が広がる

 

 振り返ると今日歩いてきた太郎山からの稜線が美しい曲線を描き、薬師岳が、「あ、そこにいたんですか」と思うほど近くにそびえているのが見える。やっとアルプスらしい景色に出会えた。写真を撮るのが忙しい。

 

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久しぶりに見た青空

 

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急いで撮らなくっちゃ


 この一瞬、青空が広がった瞬間に展望の効くピークにいたのは本当に幸運だ。ザックをデポしてピークまで上がる。足元には雲海が広がっている。一気に空の上に来たようだ。

 

 

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 一気に空の上に来たような

 

 足元に目をやると巨大なカールが一望できた。今日、泊まる予定の黒部五郎小屋も遠くに見える。このまま天気がもってくれると良いのだが。
 

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黒部五郎のカールを一望


 ザックを回収し、カールの底に降りて行く。浮石に注意しながら急降下して行くと、そこは大雪渓とお花畑の広がるとても美しい場所だった。秘境とはこのような場所を言うのか。

 

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カールに降りて行きます

 

 カールの底で、雪渓を見上げながらお茶を沸かして小休止。暖かい飲み物がとても美味しい。至福のひと時だ。雪渓の上ではシリセードを試みるグループがいた。雪解け水はとても冷たく、タオルをぬらして頭に巻くととても気持ちが良い。空は再び曇ってきた。とりあえず小屋を目指して頑張ろう。

 

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カールの底には大雪渓

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雪解け水で洗濯を


 カールの底の景色はとても不思議だ。家ほどの大きさの岩が横たわり、大きな亀裂が入っている。まるで空からふって来たようだ。ひょっとして、ここに氷河のあった昔からここの存在していたのだろうか。

 

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カールの底の巨石(何処から来たのか?)

 

 カール歩きも2時間を過ぎると次第に辛くなってきた。小屋はなかなか見えず、雨も降ってきた。今夜のテント泊を考えると何だか憂鬱だなー。

 

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カール歩きも長いときつい

 

 黒部五郎小屋もまた、ガスに包まれていた。雨も次第に強くなってくる。何が「雨は今日の午前中がピーク」だ!。空に向かって毒づいても仕方が無い。

 

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小屋につく頃にはまた雨が

 

 今日は意地でもテントで泊まる。しかし、この雨では食事の準備もままならない。メンバーのAちゃんの疲労が激しい為、女性二人だけ小屋に泊まり、野郎3人がテントに泊まることに。

 

 小屋の炊事場を何とか使い、食事をすませ、天気予報を確認する。明日は何とか雨は降らないらしい。が、梅雨明けの言葉は聞かれなかった。

 

 もうこうなれば神頼みしかない。湿ったテントの中でなんとかシュラフに潜り込み、雲の上に出ているだろうお星様に、「明日は晴れますように」と願いを込め、直ぐに眠ってしまった。

 

続く