晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

御嶽山 たまには雲の上まで 2006.06.17

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 雲海に浮かぶ中央アルプスから富士山

 

<メンバー>
単独

 

<山域>

 

<コース>
田の原~王滝頂上~御嶽頂上(剣が峰)~御鉢めぐり~二の池~剣が峰~王滝頂上~田の原

 

 本来であれば金曜の夜から北アルプス槍ヶ岳への遠征の予定だった。が、天気予報とリーダーの都合で中止になってしまった。しかし、天気予報はネコノメのように変わり、土曜の午前中は晴れに変わった。

 

 先週は登山口まで行って撤退してきた。遠征は中止だが何としてでも出かけたいものだ。

 

 そうこうしているうちに金曜日は仕事が手間取って帰宅は21時ごろになってしまった。翌日は天気下り坂なので泊まりは止め。勝負は土曜の午前中、あまり猶予は無い。
近場でのんびりとも考えたが、3000mを超える高さで自分がどう動けるか試して見たい。結局、先週あきらめた御岳山へ出かけることにした。

 

 今回は天気の関係で行動できる時間が少ないと見込み、アプローチ、行程が最も簡単な田の原コースにした。累積標高差1000mあるかないかなので、鈴鹿と変わらない。

 

 早朝に登山口にいたかったので、眠ることなく0時過ぎに出発。途中のドライブインで仮眠をとり、田の原駐車場へは4時過ぎに到着。

 

 少し仮眠を取りたいところだがあたりはもう明るくなってきているので、直ぐに出発した。先行者はだれもいないようだ。朝の薄暗い中、御嶽山の巨体が浮かび上がる。やっぱりスケールが大きい。

 

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早朝の御嶽山 田の原より
             

 

 田の原をでてしばらくは樹林帯の中を緩やかに歩く。やがて傾斜は徐々にきつくなってくる。ハイマツに覆われた斜面と残雪がはやはりここは高山なのだなと思わせる。足元に桜のような花が咲いている。
              
 

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 ハイマツと残雪の急斜面 

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桜の仲間

 

 徐々に高度を上げるにつれ、周りも明るくなってきた。背後の南東の空には雲海が広がり、その雲原に日が差し込み、幻想的な景色を見せてくれる。      

 

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雲海の上に日が差す

 

 8合目を過ぎると雪渓を横切る。アイゼンが必要なところではないが、久しぶりの雪の感触を楽しむ。どこからか小鳥が飛んできて雪渓の上でエサをついばんでいる。

 

 空気はまだ冴え冴えとしており、鳥のさえずりだけが響き渡る。気持ちのいいひと時。やはり来て良かった。

 

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まだ雪渓が残る

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雪渓の上の小鳥

 

 時間が立つにしたがって徐々に青空が広がってきた。天気はあまり期待していなかっただけにうれしい。

 

 しかし、まだ1時間ほどしか歩いていないのに息が切れてきた。徹夜で歩いているからなのか、それとも普段とは違う高さからなのか?。王滝山荘はさっきから見えているが、なかなか近づいてこない。
              

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青空が広がってきた

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王滝山荘はまだ遠い

 

 9合目で一息つく。足元の雲は厚みがまし、本当の海のようだ。雲の海の向こうに中央アルプス南アルプスの山々、そして富士山が見える。

 

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荘厳な景色①

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荘厳な景色②

 

 御嶽山は火山なので登山道もゴロゴロした溶岩の礫が転がり不安定な道が続く。弾む息にあわせ、ゆっくりと足を進めると王滝山荘も少しずつ大きくなってくる。

 

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王滝頂上までもう少し

 

 やっとの思いで王滝山頂へ到着。りっぱな山荘と神社がある。山荘は営業しておらず、窓や入り口は堅く閉ざされている。

 

 ここから御嶽山の火口部分にはいる。頂上と名はついているが本当の頂上、剣が峰はまだ先だ。八丁だるみと呼ばれる平坦地の向こうに剣が峰がそびえている。

 

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王滝頂上の御嶽神社(奥社)

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八丁だるみから剣が峰を見る

 

 八丁だるみからは植物が全くなく、どこからか漂ってくる硫黄の匂いがここが活火山であることを教えてくれる。さえぎるものが何も無いため、近く見えるが足は重く、なかなか近づいてこない。やっぱり寝不足は堪える。

 

 山頂部の山荘の脇に入る。頂上はここも立派な神社が建っている。神社の石段を登りつめるとそこが御嶽山の頂上、剣が峰となる。

 

 

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 御嶽頂上山荘より王滝頂上を見る

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この石段を登れば

 

 剣が峰頂上では360°の大展望が待っていてくれた。北にはあこがれの北アルプスの山々がくっきりと見える。ひときわ尖っているのは槍の穂先だ。

 

 東には雲海の雲海は更に広がりを見せ、中央アルプスの山々が海に浮かぶ島のよう。まるで空を飛んでいるような錯覚に陥る。

 

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あこがれの北アルプス

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あこがれの北アルプス

 

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雲海のパノラマ(クリックで拡大)

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 雲海、まるで空中浮遊

 

 だれもいない頂上で小休止、目の前に広がる大パノラマに心を奪われる。やはり来て良かった。こういう景色が見れるので山は止められない。

 

 さてここからどうしようか、寝不足でぼんやりした頭で考えるが、なかなか腰は上がらず、ただ景色を眺めている。

 

 剣ヶ峰山頂ではしばらくパノラマを独り占めできた。最高の贅沢である。さて、ここからどうしようか・・。早朝に発ったせいで時間はまだ7時半だ。そうこう考えているうちに熊避け鈴が聞こえ、二人の登山者が登ってきた。今日はじめて出会う人だ。

 

 このまま戻るのもつまらない。天気はもうしばらくは安定していそうなので、御嶽の噴火口である一の池の周りを巡る「お鉢めぐり」をすることに。

 

 火口の縁は切り立った岩嶺となっている。歩くのに危険なところではないが、樹木の全く無い岩嶺は、ここが3000mだと改めて思い出させる。神社の裏手から「縁」にそって歩き始める。
              

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火口の向こうに白山 

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雲間の岩稜

 

 火口の縁の最高点が「剣ヶ峰」となっているので、一旦高度を落とす。振り返ると頭上には太陽が輝いている。地上より太陽に近いせいか、日差しがきつい。ここでサングラスを装着。
  

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剣ヶ峰を振り返る

 

 池の周りにはまだ雪が残っている。縁の内側は雪、外側は雲。二つの白の境界線をふらふらと歩く。空の上で平均台を歩いているようだ。

 

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火口に残る雪

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お鉢の縁を回る

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雪の斜面は緊張する

 

 お鉢をほぼ半周したところで、火口、一の池の全貌が見渡せる。反対側には日本で最も高いところにある池、二の池が見える。

 

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御嶽噴火口(一の池)全景

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二の池 鏡のような湖面

 

 二の池は万年雪が溶け出し、池を満たしている。火山の成分か、はたまた空の青さが溶け込んだのか、深い青色の湖面が波一つなく広がっており、次々と姿を変える雲といつまでも白い万年雪を映し出している。

 

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日本最高所にある池 二の池

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二の池に映る万年雪

 

 お鉢を一周して再び剣ヶ峰に戻った時には気温は上がり、すっかり暑くなってきた。寝不足の体もそろそろ悲鳴をあげだした。腰を下ろすとついつい寝てしまう。なごり惜しいが、そろそろ下山しよう。

 

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八丁たるみと王滝山荘

 

 下山は来た道を引き返す。火山礫のゴロゴロ道は歩き難い。もう少し雪が残っていれば滑って下りれるのだが。

 

 この時間帯になるとひっきりなしに登山者とすれ違う。みんな暑そうに赤い顔をしている。

 

 田の原駐車場には11時過ぎに到着。これだけ遊んでもまだ土曜の昼前。寝ずに遊ぶとずいぶん時間を得したような気になる。

 

 今回は思い切って来てみてよかった。仕事では疲れた一週間だったが、その疲れを吹き飛ばす気持ちのいい山行だった。たまには雲の上まで遠征するのもいいもんだ。