藤原岳 木和田尾撤退 2005.12.30
木和田尾から鞍掛峠方面を望む
<メンバー>
単独
<山域>
<コース>
山口~木和田尾~765鉄塔~木和田尾~山口
2005年の登り納めは何処にするか?仕事納めの12月29日の夕刻から、頭の中はそればかり考えていた。
締めはやはり、鈴鹿最高峰の御池岳か、しかしR306のゲートが閉じているので日帰りで行くのは容易ではない。ましてや今年は雪が多いので困難な山行になるのは充分に予想がつく。しかし、天気予報は晴れ、青空に輝く雪の奥の平が目の前にちらつく。
スノーシューを使えば木和田尾から白船峠越えで何とかなるだろう。時間に余裕を持たせる為、いつもより早く家を出る。山口上水場前の登山口には一台の車もない。装備を確認し、いざ出発。
最初は杉の植林帯の中を谷沿いに進むが、のっけから足首ほどの積雪である。降ったばかりで締まっておらず、気温が高めのせいか重く感じる。早々にスノーシューを装着し、ノートレースの雪道を一歩一歩足を進める。
最初から雪道
鹿の足跡(ちゃんと登山道を歩いている)
降りたての雪というものは全く厄介である。積雪は60cmから70cmと思われるが、全く締まっておらず、スノーシューの浮力でも一歩ごとに大きく沈み込む。少し急な斜面では雪の中でもがくような状態に陥る。
一時間ほど歩いても高度計の数字は全然増えてこない。大汗をかきながら斜面にへたり込む。
早くもバテバテ
木和田尾の下部は道がわかりにくい。ましてや何処を歩いても新雪であることには変わりないので、どうしても傾斜の緩い谷芯をそのまま上がてしまう。その反動で、詰めの急斜面では腰を超えるラッセルとなり、単独行の厳しさを改めてヒシヒシと感じながら、雪と孤独な戦いを続ける。
斜面は段々急になってくる
トレースの全くない雪道を歩くのは骨が折れるが、雪と風が作り出す曲線が取ても美しい。自然の作用によって作り出される造形を美しいと思うのは本能なんだろうか・・・と、普段は考えもしないようなことが浮かんでくるのも、黙々と単純作業(ラッセル)を続けているからなのだろうか。
気温が上がってきたのか、斜面の表層の雪が転がり落ちてくる。中にはロールケーキのように渦巻状になる不思議な雪塊も目の前を転がり落ちてくる。
雪に埋め尽くされた谷、雪面の曲線が美しい
ロール状の雪塊
ロール状の雪塊
2時間ほど歩いて、ようやく谷間に日が差し始めた。雪が陽光に輝きだした。雪山はこれでなくてはいけない。しかし、越えなければいけない雪は膨大な容量を谷間にたくわえている。いい加減うんざりしながら、息を整える度に写真を撮る。
樹間に広がる青空
振り返れば雪の樹林が広がる
谷詰めの急斜面をもがくように登る。自分の息遣いと心臓の鼓動だけが聞こえる。時おり、枝から落ちる雪が静寂を破る。
あの斜面を越えれば尾根に乗れる
太陽が輝く
やっとの思いで稜線にでると、不意にワカンのトレースが目の前を横切っている。単独行のようだ。ここで初めて自分が正規の登山道を外していたのに気がつく。それにしても、この雪の中、単独で木和田を上がる奇特な人がもう一人いたことに少し驚く。
トレースの主は十数メートル先を歩いていた。彼もノートレースの雪道をワカンで上ってきたようだ。しばらくトレースを使わせてもらったが、それでは悪いので先行することにした。
この後は2人で先頭を交代しながらの道行きとなる。瀬戸から来られたらしい。私同様、白船峠越えで御池岳を目指しているらしいが、このペースではいいとこ白船峠までだろう。私も何処で引き返すか考え始めていた。
ようやく斜面が緩やかになってきた
再び、トレースのない雪原をワシワシ歩く。トレースはないが、ウサギの足跡が雪面にいくつもついている。動物たちもこの大雪にあわてている事だろう。
前人未踏?
でもウサギの足跡はある
不意に視界が広がり、ようやく送電線の鉄塔が現れた。送電線の下にたどり着くと強風の為か、ほとんど雪がついていない。西方に目をやると藤原岳が頭上を雲に覆われてそびえている。送電線の先も雲の中に消えている。この地点の標高は756m。白船峠までまだ、高低差200mはある。
ここまでの所要時間は約5時間。頑張れば白船峠までいけるが、目標が雲の中に覆われていたのでは、モチベーションも上がらない。ラッセルの連続で太ももの筋肉も悲鳴を上げ始めている。
同行の方が、ここで引き返すというので、私も引き返すことにした。
藤原岳は雲の中
ここで昼食とする。風が強く火を起こすのは大変なので、テルモスのお湯でラーメンを作り、おにぎりをぱくついて、ようやく落ち着いた。鉄塔から下界を眺めると伊勢平野が広がるが、ゴルフ場の多さが目に付く。風が強く、周りの地面は雪が舞っている。
鉄塔からの見晴らし
地面を雪が舞う
腰を上げる頃には日が差してきた。北方には三国岳や烏帽子の鈴鹿北部の山が雪をまとってそびえている。
木和田から北方を望む
帰りはトレースの着いた来た道を戻るだけだ。下りの雪道は歩きやすい。スピードを上げ一気に下る。木漏れ日の中、雪をけって快調に下り、1時間と少しで登山口についた。登山口に止まっていた車は私の車のみだった。
下りは快調
今日のルート
一年の締めくくりの山行としては、不本意な山行だったが雪道での自分の力量が良くわかった。来年、もう少し雪が締まったら行動範囲ももう少し広がるだろう。次こそは雪の奥の平だ。