晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

鈴鹿 朝明川 水無し谷 沢登り 豪雨崩壊の死の谷を行く・・ 2010.10.16

どこを登れと言うのか・・

 

<メンバー>
山仲間
      
<山域>

 

<コース>
水無しバス亭~水無し谷~松尾尾根登山道~松尾の頭~釈迦ヶ岳~庵座の滝~朝明キャンプ場~水無しバス亭



 2010沢シーズンも終盤戦、近場(鈴鹿)で行き先を思案するが、未見にこだわれば行くところがずいぶんと限られてくる。そこで今回は目先を変えて朝明川の水無し谷を選んだ。隣の流れ谷はガイド本にも紹介され、しばしば遡行記録も出てくるが水無し谷の記録はネットでもほとんど出てこない。ただ、「鈴鹿の山と谷4」によれば

 

松尾尾根の東の谷で流れ谷よりやや短いが見栄えのする滝が3本あって面白い。・・中略・・滝上は長いナメ床となっている。渓谷美を楽しむところで秋が一番である。日本庭園といった趣である。

 

  とある。これを読んだら行くしかないだろう。ただ、9.2豪雨の時はこの谷からの土石流が林道が分断し、朝明キャンプ場を孤立させた原因にもなった谷だ、はたして現状はどうなっているのだろうか? 

 

 水無しのバス亭から水無し川に入ると目の前に広がるのは一面の土石・・。こりゃ相当ひどいな~と思いながら谷中を歩くとすぐに真新しい堰堤にぶつかる。どうも豪雨の被害を受けて新しく作られたもののようだ。堰堤が次々と出てきたので左岸の林道に逃げる。結局堰堤は6つあった。

 

入渓点、一面の土石・・

真新しい堰堤

 

 堰堤の上は流れも出てきて少しだけ沢登りらしくなる。花崗岩の谷なので、もとは明るく開けた谷だったのだろう。少し進むと18mの見事な直瀑が現れた。水無滝である。

 

束の間、沢登りらしくなる

水無滝が現れる

この谷唯一の見どころ

 

 水無滝は左のルンゼからモンキークライムで落ち口へトラバースする。落ち口辺りが高度感がありいやらしい。

 

落ち口のトラバースがいやらしい

 

 水無し滝の上は遡行図上では美しいナメが続くとあるが、土石流から免れたわずかなナメ滝がその名残を残しているだけ。ひょっとしたらこの先にはきれいなナメが現れるのでは?なんて期待を持って遡行を続けるが行けども行けども崩壊地が続く。

 

ナメの名残り

この先はどうかな?と思うが

どこまでも続く崩壊

 

 やがて現れるハング状の12m滝も左から巻きあがる、その後、延々とゴーロを歩き、二股ののところで大きなCSの滝に行く手を阻まれる。

 

ハング状12m

CSの滝

 

 周りを見渡しても越えられそうな場所もなく、CSの下もくぐれそうにもない。仕方がないので右バンドからこれまたモンキークライムで微妙なトラバース。ここで初めてロープを出す。谷への下降は懸垂で降りる。

 

懸垂を使って巻き

 

 この後、遡行図上では多段の滝が現れるはずだが出てくるのは崩壊したばかりで角がとがった岩で埋まった谷ばかり。微かに滝の痕跡を残す箇所もあるが、それも束の間・・。もうこうなってくると沢登りの楽しさは無く、一刻も早くここから抜けだしたくなる。9.2豪雨の凄まじさを改めて感じる。
 

右のナメを登る

どこを登れというのか

崩壊跡が生々しい

家ほどの岩が崩壊しそう

昔の名残をとどめている滝

 

 谷は急速に狭まって行き、壁もモロ土のようにボロボロになって行く。ダイモンジソウがたくさん咲いている2mばかりの小滝が越えられず、I君をショルダーで押し上げて、上からロ-プを垂らしてもらって越える。

 

急速に狭まる

ダイモンジソウ

 

 標高が750mを越える辺りで左手に見える尾根がずいぶんと近くなったように見えた。このまま遡行しても脆い土壁と倒木に行く手を阻まれるだけなので左手の斜面を這い上がる。ゴミが出てきたなと思ったら10分ほどで登山道に合流する事が出来た。

 

この辺で右岸に逃げる

 

 当初は流れ谷を下降する予定だったが、もう崩壊の谷中(流れ谷はもう少しましらしいが)へ入るのは嫌だったので、展望のいいところまで行って昼食をとることにする。ヒーコラいいながら150mほど登ると大陰の上に出た。

 

大陰の上部

 

 そこからはひと踏ん張りで松尾の頭。のんびりと昼食をとり、散歩がてらに釈迦ヶ岳の山頂へ向かう。紅葉はまだまだこれからのようだ。

 

伊勢平野の展望

 

 下山は庵座の滝が見たいというI君のリクエストで庵座谷コース。以前はガレガレのいやな道だったが、ずいぶんと整備されて歩きやすくなっていた。そうなれば大陰のガレの眺めや庵座の滝などの見どころもあるので、人気登山道として復活するのではないだろうかと思った。

 

大陰のガレを見上げる

 

 久しぶりに見る庵座の滝はやっぱり素晴らしかった。前衛の滝で少し遊んだ後、落ち口に降りてしばらく滝見物。今日の沢は殺風景な風景ばかりだったので、ここで癒されて元を取らなくてはいけない。
あまりゆっくりしすぎたので、水しぶきですっかり濡れてしまった。

 

庵座の滝見物へ

ちょっと遊んでみる

庵座の滝、カッコイイ~

 

 後はダラダラと登山道を下るだけ。途中見つけたドクドクしいキノコ(テングダケ)を見てI君はうまそうだと言っていた(気をつけた方がいいよ)。朝明キャンプ場の近くでは、新しい堰堤の建設工事をやっていた。

 

ここにも新しい堰堤

 

 キャンプ場から車道に降りて水無のバス亭まで戻り今回の山行は終了。それにしても水無谷はひどい荒れ様だった。とても遡行の対象になる谷では無く、危険でもあるので決して足を踏み入れるべきでは無いと思った。

 

今回の地図