晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

雨乞岳 一人ぼっちのホワイトクリスマスイブ 2007.12.24

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霧氷の東雨乞岳


<メンバー>

単独

 

<山域>

 

<コース>
朝明-根の平峠-コクイ谷出合-七人山-東雨乞岳-雨乞岳-杉峠-御池鉱山跡-コクイ谷出合い-根の平峠-朝明

 

 クリスマスイブを含む3連休は当然山行を考えていたが、雨に祟られ、最初の二日間は街での野暮用に当てることになった。そしてクリスマスイブでもある最終日、天気予報は一応晴れとなったので、いそいそと早朝から車に乗り込み、鈴鹿へ向かう。

 

 今日の目的地は雨乞岳。今年も積雪期の雨乞岳を考えているが、雪の無いこの時期に一度歩いてコースのイメージを掴んでおこうと考えた。

 

 朝明の駐車場で準備を済ませ、歩き始めるとパラパラと雨が降ってきた。晴れの予報といっても冬型の気圧配置の時は、鈴鹿日本海側の天気に近くなる。空はどんより曇り、風が強い。モチベーションは一気に下降するが、今日はトレーニングと自分に言い聞かせ、根の平峠への道をトボトボと歩く。

 

 根の平峠には真新しい案内板が付いていた。この道は千種街道といって昔から伊勢と近江を結ぶ重要な街道だったようで、この辺りに集落があったことが記されている。
多くの人が関心を持ってくれるのはうれしいが、観光地化だけは勘弁して欲しいものである。

 

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最近付いた案内板


 今日は一人なので、気の向くままに歩くとしよう。集落跡らしき平坦地をうろうろ歩く。そういう目で見ればあちこちに屋敷が建っていたような平坦地がある。心の中は中世の昔に一気にタイムスリップ。

 

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あの石垣は集落跡?

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これも?

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根の平集落の御神木だったといわれる神杉


 根の平集落の御神木で最近まで注連縄が飾ってあったという神杉を越えてコクイ谷出合いへ到着。渡渉をしようと思うが前日の雨でいつもより水量が多い。渡渉点を探して10分ほどウロウロするが、適当な場所が見当たらないので、少々冒険気味に飛び石で渡る。こういうときはダブルストックだと心強い。

 

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コクイ谷出合い


 渡渉したら杉峠への道へ向かわず、七人山へ向かって直登する。急ではあるが木の根を掴むほどの急登では無く、雨乞岳への最短ルートになる。濡れた落ち葉が足下で滑ってなかなか高度が稼げない。風の音にひるんでしまい、何度も立ち止まり行こうか引き返そうか逡巡する。

 

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七人山への取り付き

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お化けのような巨木


 ホラー映画に登場しそうなお化けのような巨木を超えると傾斜はゆるくなり、七人山の頂上部へ近づいたことが判る。七人山頂上部は、この辺りでは珍しいブナの森となっており清清しい空間となる。

 

 冷たい強風のせいで枝には小さな霧氷が育っていた。鹿の足跡以外にトレースは無く、あたりに生き物の気配は無い。風の音だけが響き渡るのに静寂を感じてしまう。

 

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霧氷の森

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七人山

 

 七人山から一旦斜面を下り、七人山のコルに到着。ここで風を避けて昼食を採る。今日もテルモスの紅茶と6個入り200円のパン。一人の時はこれ位が簡単でちょうどいい。

 

 ひょっとしたら武平峠からのトレースがあるかと思ったがそれも無し。もうしばらく独り占めの山歩きが続きそうだ。

 

 東雨乞岳への斜面を登り、笹の割り堀道を進んでいくと雲が切れ、青空が広がり始めた。ここへ来てようやく気分が乗ってきた。笹が切れたところで振り返ると御在所、鎌が近くに見える。

 

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東雨乞岳への割り堀道

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青空と御在所

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鎌も見える

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東雨乞岳頂上直下


 東雨乞の頂上はやはり無人だった。いつものように強風が吹き荒れ、山頂の道標には氷が付いていた。雨乞岳も北側の潅木が霧氷で覆われていた。

 

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東雨乞岳頂上

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雨乞岳へ向かって


 雨乞岳に向かう途中、杉峠へ降りていく尾根の途中に今日初めて人を見かけた。男性が二人のようで、おそろいのオレンジのヤッケを着ていた。まさか、ハンターかもと思ったが、ハンターがこんな見晴らしのいい場所にいる訳は無く、今日は鉄砲の音もしなかったので恐らくハイカーだろう。

 

 雨乞岳の頂上もやはり無人だったが、先の二人のものと思われる足跡が付いていた。きっと風を避けて岩陰に行ったのだろう。

 

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無人の頂上

 

 さあ、ここからは何処へ行こうか。時間はまだまだあるので、杉峠へ下りて鉱山跡でも見学しよう。頂上では写真だけを撮って、先人の足跡を辿って杉峠への道を歩き始めた。

 

 見通しの悪い頂上はすぐにお暇し、大峠の沢に向かう。山頂にあるのにどんな旱魃でも枯れないので、竜神様の住む池として雨乞いの対象になった池だそうだ。今日は寒さの為凍り付いている。

 

 杉峠へ下る道の途中で、今日はじめてのハイカーに出会う。どうやら甲津畑から登ってきたようだ。自分の事は棚に上げて、こんな日に山に登る人もいるもんだなーと思ってしまった。

 

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山頂の池「大峠の沢」竜神さまが眠るという

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東雨乞岳を振り返る

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佐目峠からイブネ・クラシ方面

 

 杉峠で少し休憩。ここが街道として機能していた頃から旅人の目印であったという大杉に挨拶する。だいぶ弱ってきているようだが、いつまでも枯れずにここに立っていて欲しいと願う。

 

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杉峠の大杉

 

 ここからは千種街道沿いにコクイ谷出合いを目指す。途中の御池鉱山跡をじっくり見物する事にする。

 

 御池鉱山は明治末期の富国強兵時代から本格的な採掘が始まったようで、主に銅、銀を採掘していたそうだ。多いときには300人近い人がこの辺りの鉱山で働いており、彼らの住居はもちろん、神社、学校、郵便局、警察まであったという。

 

 こんな山間に一大集落があった事に非常に驚いてしまうが、今では崩れかけた石積みしか、その痕跡が見出せない。ここでも頭の中は明治から大正の昔にタイムスリップ。

 

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御池鉱山の遺構①

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半ば埋もれかけた坑口

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排水施設?

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金属を含んでいそうな石

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御池鉱山の遺構②

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自然石を使った石段

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石段の上の祠跡(旧金山神社?)

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これまた立派な石段

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規則正しく並ぶ礎石

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古の生活の跡

 

 ゆっくり鉱山跡を散策したら後は根の平峠に戻るだけ。雨もあがり風も弱まり陽だまりの中をのんびり歩く。再び神杉を見上げると青空が広がっていた。

 

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再び、コクイ谷出合い

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神杉 アップで

 

 朝明の駐車場についたのは14時半ぐらい。最初はどうなるかと思ったが、今日もいい山歩きが出来た。街はクリスマスで一色だが、山で今日あったのは3人だけ。
静かなホワイトクリスマスが楽しめた。

 

これが、登り納めになるか、あと一回は行きたいナー。

 

終わり