晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

台高 光谷遡行~不動谷下降② 決死の清五郎滝下降 2015.10.25

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この滝の下降が・・

 

<メンバー>
山仲間 3人

 

<山域、形態>
台高 沢登

 

<コース2日目>
泊地(7:10)~マブシ嶺(8:00)~木組峠(9:05)~橡山林道橋(10:15)~清五郎四の滝(12:30)~ 清五郎三の滝(14:00) ~清五郎二の滝(14:25)~林道ゲート(19:40)~駐車地(20:30)

 

前日の記録

ikuyayuuki.hatenablog.com

 

  2日目、突風が時折谷の中まで降りてきて落ち葉を嵐のように巻き上げる。風の又三郎を連想してしまった。今日は行程が長いので早めの出発(といっても7時だが)。水の枯れた谷をつめ、途中から尾根に逃げるとマブシ嶺の直ぐ横に飛び出した。

 

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気持ちの良かったテン場

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谷を詰める

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稜線(尾鷲道)に出た

 

 空は澄み切っていて大峰の山々や尾鷲の海も見える。木組峠までの道はその昔、木材を運んだトロッコ道の名残だそうで非常に歩きやすい。木の間から漏れる朝日を楽しみながら更に1時間ほど歩いて木組峠に到着。

 

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太平洋が見える

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あれは尾鷲かな

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うーん、気持ちいい

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本当はマブシ嶺らしい

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快適なトロッコ道?

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木組峠

 

 少し休憩した後、ピークを一つ越えた辺りで不動谷に下りていく。しばらく行くと突然林道に架かる橋が現れた。こんな山奥に立派な橋が架かっているものだ。

 

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不動谷に下降

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橡山林道の橋

 

 橋を越えるとナメが現れてだんだん雰囲気がよくなってくる。白い花崗岩の明るい谷で何だか愛知川を思い出す。

 

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きれいなフチ

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ナメも出て来た

 

 下るにつれて大きなナメや淵が現れる。泳げる季節だと何の問題も無いのだがこの季節はルートにいちいち気を使う。やがて20m超の直瀑が現れた、清五郎第4滝か。ここは右岸のルンゼからロープを使わずに降りる事が出来た。思ったよりもあっさりだ。

 

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慎重に下降

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おっとどうしようか

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清五郎四の滝(ロープ無しで降りれた)

 

 続く第3滝も懸垂3ピッチで降りる。ここまでは非常に順調。大滝の下降はこれで終わりだと思って安心していたら、滝見道の道標が現れ、本物の清五郎の滝(第2滝)に行く手を阻まれた。

 

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清五郎三の滝の落ち口

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懸垂3ピッチ

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清五郎三の滝

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清五郎二の滝の落ち口

 

 滝見台まで降りて様子を見るが側壁は切り立っていて懸垂も容易ではなさそう。遊歩道は橡山林道に通じているようだがこちらに行けば非常に遠回りになってしまう。うーん、悩んだ挙句、記録にある通り右岸の側壁を懸垂で降りる事にする。

 

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清五郎二の滝

 

  しかしこの懸垂が今回の山行の核心だった。木の生い茂った垂壁はロープが次の足場に届くか非常に判りづらく、はたしてこのルートでいいのかどうかの判断がなかなかつかない。角度が急なので登り返しは殆ど不可能、ルーファイは困難を極めた。

 

 3人でもロープのセット、下降、回収、次の支点へのセットとやっていると時間はあっという間に過ぎてしまう。川床まであと少しと言うところでロープが下まで届いているか判らない状態になってしまった。人間、あせっていると判断を誤るようで、早く降りてしまいたいという心理から一か八かの下降に入ってしまった。

 

 しかし、この一か八かが大外れ。半分ほど下ったところで完全にロープが届いていない事が判明。万事休すだ。

 

 登り返しを試みたがプルージックロープを1セットしか持っておらず、腕力のみでは到底無理。横を見るとわずかにクラックが走っているのが見えたのでプルージックでロープに仮固定し、クラックを10m程トラバースして横に生えている立ち木に何とか辿り着く。立ち木の真下にはロープの届きそうなスタンスがあったので、立ち木を越えて再度懸垂下降を試みる。

 

 この懸垂下降でも痛恨のミス、さっきのトラバースで握力を使い果たし、ブレーキ側のロープが手の中をすり抜けていく。あ、と思った瞬間、すっぽ抜け防止の末端で止まったのとスタンスに足が着いたのが同じだった(このときは生きた心地がしなかった)。

 

 後続の2人にとっても非常に厳しい懸垂となったが、何とか3人揃ってスタンスに辿り着いた時にはあたりは真っ暗になっていた。ラストは10mほどの懸垂で川床に降り立ってようやく生きて帰れる目処がついてホッとする。

 

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困難な懸垂

 

 しかし、安心したのもつかの間。下降地点から100mほどしか離れていないはずの林道がどこにあるのかわからない(川に架かる橋は懸垂の途中から見えていた)。

 

 谷はちょっとしたゴルジュになっていて、ヘッデンで下降するのは不可能。左岸の樹林帯に登り、トラバースしながら林道にぶち当たるのを期待しながら歩くが、いつまでたっても林道が出てこない。ビバークしようかと言う思いが頭をよぎり始めた頃にやっと林道に辿り着いた(ゲートを越えた直ぐ先だった)。

 

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やっと林道に到着

 

 これで今日は暖かい布団で眠れる目処がついた。早足で車まで歩き、急いで携帯の通じるエリアまで降りる。家に電話し無事に下山した事を伝えると、どっと疲れが襲ってきた。

 

 今日中に大阪まで帰りたいEちゃんを何とか津発の終電に乗せ、今回の山行きはようやく終了。2日目の午前中まではノンビリ楽勝ムードが最後に地獄を見てしまった。(無事に怪我無く帰って来たが)。

 

以下反省

 

 今回の山行はやはり最後の懸垂下降に尽きる。今回は九死に一生を得た形で何とか全員無事に帰る事が出来たが、ロープが届いた確証の無いところでは下降しない、プルージックでのバックアップを取る。すっぽ抜け防止に末端処理を行う。登り返しの技術を身につける、という今まで意識せず、時にはおろそかになっていた技術の重要性を改めて思い知らされた。

 

 今シーズン最終盤になってこういう経験が出来た事はある意味いい勉強だったのかもしれない。これを今後の糧にしていきたい。

 

 お付き合いいただいたSクリームさん、Eちゃん、怖い思いをさせて申し訳なかったです。これに懲りずにお付き合いくださいね。

 

終わり