晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

番外編 愛知川源流域のミステリー?

 先日のテント泊の時、少しだけ妙な出来事があった。その夜は、アルプスで大量遭難を引き起こした低気圧のせいでものすごい風が吹き、焚き火もままならず、ずいぶんと寒かったので宴会もほどほどにそれぞれのテントに潜り込んだ。

 テントは男である私とZ君がソロ、女性の二人は一つのテントで、計3つのテントで寝た。風を避けて樹林にテントは張ったがテントはバタバタと風にあおられ、頭上の木はぎしぎし揺れていた。とても熟睡できるような状態ではなく。遠くから徐々に伝わってくる風が木々を揺らす音を聞きながらウトウトしていた。

 何時くらいだろうか・・。時計のライトをつけるのも面倒だったので確認していないが、何かが外を歩き回っているような気配で目が覚めた。辺りは枯葉が一面につもっている。それが、サクッ、サクッ、とわりあいに規則正しくなっている。
最初はZ君が小用にでも起きたのだろうと思い、またウトウトと眠りにつこうとしたが、足音?はなかなかやまない。

 ひょっとして山の動物が辺りをうろついているのだろうか、テントの中では遠くの音がひどく近くに聞こえるものだしな、幸い、食べ物の類は放置していないし大丈夫・・・。

 でも待てよ、外の風は相変わらず強く、木の葉が風に打たれてバシバシいってるし、こんな状況で鹿がうろつくのだろうか・・・。

 ここまで来ると、耳は謎の足音から離れない。足音らしき物音は相変わらずテントの周りをうろうろしている。こっちへ来るなーと思いながらも不思議にそれほど怖い思いはせず、いつの間にか眠ってしまった。

 翌朝、辺りが明るくなってからテントを這い出して見ると、Z君が既に起き出してお湯を沸かしている。昨日はすごい風やったなーなんて話をしながらテントを見ると、折れた木の枝が引っかかっている。昨日の物音はこれやったんやなーと一人で納得していた。

 やがて、みんな起きて来たので、朝食の準備をしているとZ君が妙な事を言い出した。

「昨日の夜、めっちゃ怖かった~」

 聞けば、夜、テントをバシバシ叩く音がしたかと思うと、ガリガリと引っかく音・・。怖くて怖くてシュラフに潜り込んでいたようだ。

 では、私が感じた気配はそれと同じものだったのか・・・。

 テント場の周りは荒らされた様子もなく、動物がいたような形跡は無い。結局それが何なのかわからないまま、「まあ、山ではこんな事もあるよ」といい、いつものように下山した。

 ただ、それだけの話なのだが、鈴鹿山系は昔の峠道や炭焼きの道が縦横に走り、人の気配が濃い山域であるので、不思議な気配を感じる事がままあるようだ。

 特に、この辺り(杉峠を中心とした愛知川源流域)は鉱山跡が多くあり、石段などの建物あと、鉱山の鉱口、トロッコの車輪や昔の食器などが転がっていたりして、多くの人が暮らしていた痕跡が見られる。

 学校が昼間賑やかであればあるほど、静かな夜は不気味に感じるのと同じように、何百人もの人が暮らした痕跡が何十年後に山中で見ると、独特の雰囲気をかもし出している。

 「鈴鹿の山と谷」の第4巻にも、
「小屋があるのにどうしてもそこに入る気にならず、離れたところにテントをはったら、別の登山者も同じ気配を感じ、小屋を避けてテントをはった・・。」といった類の話が掲載されているし、鈴鹿源流の涼山人さんも同様の経験を著書の中に書いておられる。

 同じサークルのブッシュマンからは、「鉱山跡でテント泊をし、みんなで宴会をしていると、暗闇からスーツ姿の男性が歩いてきて、みんなの脇を通り過ぎ、再び暗闇の中登山道を歩いていった」という話を聞かされた。

 あの辺りはやっぱり何かあるのかな~。

 みなさんもこんな経験ありませんか?