晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

滝本本谷から北谷 初の南紀遠征は滝見遡行① 2010.05.15-16

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宝竜の滝(二の滝)

 

<メンバー>
山仲間
      
<山域>

 

<コース>
滝本集落-滝本本谷-地蔵茶屋-滝本北谷(泊)


 GWに南紀に行ったというEちゃんの話がとてもうらやましく、土日を利用しての南紀遠征を企てる。しかし南紀はとても遠く(愛知から車で5時間)1本だけではもったいないと思い、泊り沢を行く事に。
 ただ、まだ泳ぐには早そうなので比較的難易度の低そうな滝本本谷を遡行し、上流で一泊。そして滝本北谷を下降するというコースを設定する。

 

 メンバーの都合により、集合は亀山に4:30。そこから伊勢自動車道から紀勢道路を経由して大内山まで。延々と国道42号線を南下、熊野から山の中に入り丸山千枚田の傍を通り抜け熊野川を渡り、更にすれ違いが困難なクネクネ道を小一時間走ってようやく滝本集落に9時過ぎに到着(遠かった・・)。

 

 もとは小学校だったという空き地の脇に車を停めさせてもらい準備をする。横を見ると真新しい携帯電話のアンテナ。聞けばまだ工事中だという・・。

 

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昔の小学校跡からスタート

 

 集落から道を少し歩き「宝竜滝」の看板を左折して林道を歩く。すぐに行きあたる林道終点からは滝見道が整備?されていてすぐに宝竜滝の前へ出る。最初からすごい迫力だ!滝壺まで近づいて水しぶきを浴びる。南紀の滝はダイナミックだなあ。

 

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宝竜滝(一の滝)

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底知れない釜

 

 最初の難関は宝竜一の滝の巻き。ガイドによれば滝の右側に昔の梯子が朽ちてしまった場所から登るとるというので壁を探りながら歩く。C君が薄くなった踏み跡の先に頼りない残置ロープを見つけここが取り付きだと知る。何とか登れそうだが、念の為にロープを出す。

 

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一の滝の巻き(殆ど垂壁)

 

 最初の梯子跡を通過すれば明瞭な踏み跡があり、あとは難しくない。途中、二の滝の下に下りるとここにも大迫力の光景が広がっている。 

 

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宝竜滝(二の滝)

 

 二の滝を巻いたところでようやく沢登りらしくなってくる。この谷の特徴は大きな釜を持った斜瀑(滑滝)なのだが、まだ泳ぐほど水温、気温とも高くないので巻き主体の遡行になる。真夏に来たら楽しいだろうなあ~。

 

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落ち口より

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下コッペ滝

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左から巻き

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コッペ滝

 

 コッペ滝を過ぎると取水堰堤が現れる。そこから少し遡ると石垣があり、案内板には「平惟盛住居跡」とある。熊野は都を追われた平惟盛が晩年を過ごしたという伝説があるが、さすがにこれは眉唾ものだろう。とても平安時代の物とは思えないぐらい石垣が立派だった。(これと全く同じ構造のものを更に上流で見かけた。きっと古い時代の植林か何かの小屋跡では?)

 

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取水堰堤

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何やら石垣が

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植林関係の施設?

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なんと平惟盛の屋敷跡!?

 

 住居跡の上の奥コッペ滝をバシャバシャと越えていく。泳ぐには早いと言いながらも南紀はやっぱり暖かく、楽しく水と戯れていける。巨岩のゴーロ帯を四苦八苦しながら超えると燈明滝に到着。

 

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濡れるのも楽し

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南紀は暖かい

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何やら大きな滝が

 

 燈明滝は落差約30m、滝身がこぶ状になっていてそこを流れ落ちる水がきれいな模様を描き出していて美しい・・。改めてここまで来てよかったと思う。

 

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燈明滝1

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燈明滝2

 

 燈明滝を右から巻き上がるとすぐに白滝。同じような雰囲気だが、美しさでは燈明滝の方が上かなあ。この滝も右側から巻き。

 

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白滝

 

 続いて現れたのはナベラゴの滝。この辺りまでくると寝不足の疲労がジワリと押し寄せてきており、泊予定地までの時間も気になりだした。少し休憩した後、左側の巻き道を使って滝上に出る。

 

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ナベラゴの滝

 

 ナベラゴの滝の上は一転して穏やかな渓相。ゆるーい傾斜に滑床が延々と。しかし、この滑床、意外と侮れない。てっきり小走りくらいでスピードを上げれるかなあなんて思っていたが、底の深さが行っていでなく、油断していると足をとられて転倒する事も。現にYさんは何度も転んで全身ずぶ濡れに。

 

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一転穏やかな渓相に

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滑がつづく

 

  多くの記録で遡行終了点にしている導水路を越えて更に進む。谷は蛇行しているせいか中々距離を稼げなくてだんだん焦ってくる・・。日没までにはまだまだ間があるのだが、快適な泊り場所がすぐに見つかる確信は無いので余裕が欲しいところだ。谷中を歩いていても時間がかかるだけなので、熊野古道まであと少しのところで、林業関係者用の杣道に乗って地蔵峠を目指す。

 

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北谷からの導水路(ホタバ谷)

 

 植林の山をトラバースし、尾根を越える。見通しのきかない山道は目的地にちゃんと進んでいるか不安になるが、地形図とコンパスを頼りに進んでいくとドンピシャで地蔵茶屋(跡)到着。熊野古道世界遺産登録に合わせて作ったのか、非常に立派な休憩所とトイレがあった。

 

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地蔵茶屋(熊野古道)

 

 一瞬、この休憩所で泊ろうかとも考えたが、沢の泊りはやっぱり焚火をしないと始まらないので、北谷の下降にかかる。するとすぐに薪の豊富な河原が現れた。一部は砂地になっていて寝心地も心配無いだろう。さっそくツエルトを張って焚火の準備。

 

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快適なテン場を見つけた

 

 今回はガスで米を炊いたのだが、今度は焚火で調理をしたいなあ、なんて話をしながらC君特性の豚の角煮に舌鼓を打つ。いつの間にかアルコールも混じっていい気分で沢談義、山談義・・。焚火のはぜる音とカジカカエルのやさしい鳴き声をBGMに気持ちのいい夜を過ごす事ができた。

 

つづく