晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

白山 黄金の森と紺碧の空 2008.10.19

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  錦秋の谷

 

<メンバー>
サークル

 

<山域>
白山

 

<コース>
大白川キャンプ場~平瀬道登山口~大倉山避難小屋~室堂~御前峰~お池めぐり~室堂~大倉山避難小屋~平瀬道登山口

 前夜、営業の終わった大白川キャンプの入口近くでテントを張り、鍋で小宴会。天気は限りなく良く、頭上には満点の星がきらめき、天の川が白く滲んでいる。放射冷却のおかげでぐっと冷え込んで来たので8時には就寝。心地良い酔いも手伝ってぐっすり眠ってしまう。

 

 出発は夜明け前の5時。平瀬道登山口では暗闇の中出発の準備を始めている人もいるが、車中で寝ているだろう大半の人はまだ起きる気配は無い。煌々と輝く月がオリオンを従えてヘッドランプがいらない程に夜道を照らしている。さあ、出発だ。

 

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月とオリオン
 
 今日は行動予定10時間のロングコース。妻にも無理の無いようにゆっくりゆっくり体を温めるのを意識しながら登って行く。30分ほど歩いてようやく辺りがじんわりと明るくなってきた。紅葉が見事なはずだが薄暗くて正直良く分からない。月に見守られながらゆっくり歩いて行くと背後から明るくなり、稜線から太陽が顔を出し始めた。

 

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夜明けの月

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日の出

 
 日の出からしばらくは、まるで森が一斉に輝きだしたような錯覚にとらわれる。ちょうどダケカンバの黄葉に朝日があたり、まるで金色の光の中にいるようだ。歩くのを忘れ、光のショーを楽しむ。

 

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輝く森

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朝日に燃える

 

 徐々に高度を上げて行くとダケカンバが目立つようになる。真っ白な幹に金色の葉を持つ巨木の森は幻想的な雰囲気。月はまだ我々を導くかのように空に浮かんでいる。  

 

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ダケカンバと月

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ダケカンバ

 

 しばらくして頭上から声が聞こえる。ん、今日は我々が最初のはずだか・・。と思ったら、昨日大倉山の避難小屋で泊まったパーティーで、今日は下山するだけだそうだ。賑やかなパーティーで昨日は楽しい夜を過ごしたのだろう。高度を上げるに従って稜線が近づいてくる。左手下の地獄谷は見事な紅葉で埋め尽くされている。

 

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稜線が近づく

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錦秋の谷

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きれいだなー

 

 大倉山避難小屋で最初の休憩。ここまでくれば上りは約半分、妻もよく頑張った。小屋を超えると傾斜の急な斜面を九十九折りに登り、そこを超えると目の前に白山がバーンと現れた。後ろを振り返るとアルプスの山々が太陽の中に浮かんでいる。

 

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白山が見えた

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背後にはアルプスが

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まだまだ元気

 

 いつの間にか太陽は地平線からずいぶんと離れてしまい、空の青さは益々深くなるようだ。夏ならまだ雪渓が残っていたであろう谷を超えると傾斜は緩やかになり少しほっとする。この辺りまで来れば紅葉はすでに終わっており、しぼんだナナカマドの実が辛うじて秋の名残をとどめている。ハイマツが現れると山頂付近の台地に乗った事になる。

 

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空が青い

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この辺りの紅葉は終わり

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もう少し早かったらな~

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三方崩山

 

 道はなだらかになり、雲一つ無い空の下での高原散歩になる。南には別山や石徹白の山々が見え始める。風景は初冬のようだが、夏はここがお花畑になると行ったら妻は信じられなさそうな顔をしていた。

 

 

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 別山が見えた

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枯野を歩く

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南竜ヶ馬場方面

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別山と石徹白の山々

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赤い屋根が見えたら

 

 ハイマツの向こうに赤い屋根が見えたら室堂も目と鼻の先。営業は先週でおしまいらしく、まだ、朝早いせいもあり、人影もまばらだ。妻は神社でお守りが買えなかった事がとても残念なようだが、それなら頂上で神様にお参りしようという事で、休憩もそこそこに頂上を目指す。空は相変わらず雲ひとつない晴天だ、さあ、どんな景色が待っているのだろうか。

 

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なだらかな御前峰への道

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白山神社も店じまい

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頂上を目指して

 

 室堂から頂上(御前峰)までは標高差300m、コースタイム40分だ。きれいに整った石畳の道をゆっくりゆっくり登って行く。ここまで来ればもう急ぐ必要も無い。立ち止まる度に景色の素晴らしさにため息をつく。

 

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真っ青な空の下

 

 何組かの下山してくるパーティーとすれ違いながら高度を上げて行く。振り返れば室堂の屋根がずいぶんと小さくなっている。朝、下を出発した人たちがそろそろ到着する時間のようで、たくさんの人が休憩しているのが見える。

 

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室堂があんなに小さく

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いい眺めだねえ

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遠くに御嶽山

 

 頂上の祠がはっきりと見えるようになってからが結構長く感じたが、それでもコースタイムより少し早い時間で頂上に到着。Uちゃんは早速お参りを始めた。「御賽銭ちょうだい」と言ったら「自分のお金じゃないと御利益ないよ」と言われ、自分の財布から10円玉を出して私もお参り。(家内安全、夫婦円満、安全山行 etc・・)

 

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何をお願いしたの?

 

 頂上からは360°の大展望。室堂から裏側に当たる噴火口は今までの穏やかな山容とは打って変わって荒々しい姿を見せている。東に目をやれば御嶽から乗鞍、北アルプスの山々勢揃いだ。槍穂と剣が一緒に見えている。これまた素晴らしい。

 

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噴火口跡

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北アルプス方面

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御嶽、乗鞍、槍、穂高、剣まで見える

 
 このまま室堂に降りるのは少し勿体無い気がしたので、御池めぐりに噴火口まで下りてみる。ザレた急斜面を降りると岩がゴツゴツの荒涼とした世界。翠ヶ池は空の青が写りこんでいる。

 

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噴火口に降りる

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翠ヶ池

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岩がごろごろで殺風景

 

 雨も少ないせいか池の水も少なく、それ程目を引くところも無いので室堂に戻る事にする。大汝峰を右手に見送り、山腹をトラバース気味に回り込む。途中、わずかに残った雪渓を見かけた。この上に雪が積もると万年雪になるんだろう。

 

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雪渓が残っていた

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さあ、室堂へ戻ろう

 

 室堂に戻るとずいぶんとお腹が減ってきた。昼食の準備をしていると、いつの間にかたくさんの人でごった返していた。小屋の営業が終わってもまだまだ人が来るものなんだ。大きなザックを背負った高校(大学?)の山岳部らしいパーティー、全身タイツで軽装のトレイルランニングのパーティー、人気の山はやっぱり違う。お腹がいっぱいになったところで下山を始める。

 

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三方崩山

 

 ピストンは行きと帰りで景色が同じなので普段なら退屈するところだが、今回は違う。午後の太陽は行きとは違った角度で山肌を照らしており、逆光気味だった三方崩山や小白水谷方面の紅葉がくっきりと見える。

 

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大白川湖が見えた

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小白水谷方面の紅葉

 

 先行する男性が急にザックを下ろし、何やらごそごそしだした。何かなと思って視線の先を追って見ると地獄谷の紅葉が朝にも増して輝いて見える。男性はどうやら三脚を取り出し、本格的な撮影に入るようだ。

 

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その視線の先は

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絶景が広がっていた

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森が輝いている

  
 大倉山避難小屋を過ぎると紅葉樹林の中に入って行く。朝はまだ日の出前で十分に見る事が出来なかったぶなの森の紅葉も見事だ。Uちゃんは下りの疲労がかなりたまって来たようだが、登山口まであと○kmの道標が現れる度に励ましながら何とか歩く。景色の美しさが疲労を和らげてくれるのが幸い。

 

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紅葉を見ながら下る

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空も相変わらず青い

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金色のトンネル

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ぶなの紅葉1

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ぶなの紅葉2

 

 ほぼ予定通りの時刻で登山口に到着。エアリアのコースタイムより若干早いペースで歩けたのは何より(Uちゃん、良く頑張った)。抜けるような青空と輝くばかりの紅葉に恵まれ最高の山行きだった。
 
 平瀬温泉でゆっくりと汗を流したあと、東海北陸自動車道経由で名古屋へ向かう。この時はまだ、帰りの高速道路が大渋滞しているとは知る由も無かった・・。

 

終わり