梅雨の晴間
<メンバー>
サークル
<山域>
<コース>
飛騨沢の雪渓登りもいよいよ大詰めを迎えてきた。傾斜は30度近くになり、高度のせいか息もあらい。おまけにガスが出てきて視界もさえぎられた。あとどれくらい登れば飛騨乗越しに着くのか考えるのもいやになってきた。
足元を見つめながら、ひたすらアイゼンの爪を雪面に食い込ませ、体を一歩一歩持ち上げて行く。カメラを向けるとその瞬間だけ元気にピースサインをだすメンバーたち。だが、元気イッパイの者はこの時点では誰もいない。
何度も設定した到着目標時間を過ぎ、誰も口を聞かなった頃にようやく雪渓が終わり、石礫帯になった。ガスのせいで良く見えないが、もうすぐ乗越しのようだ。
ガスの中に道標が浮かび上がったかと思うと、そこが飛騨乗越だった。全員ザックを置き、へたりこむ。本来なら絶景が広がるのだろうが、一面の白い世界の中、ただただ息を整え、水を飲む。
もうあと少しというBやんの激を受け、のろのろと腰を上げる。シャリバテでも無いのに体がやたらと重いのはやはり高度のせいだろうか。普段は空気の濃い鈴鹿を歩き回っているので、なかなか3000mには順応できないのかもしれない。それでも、テン場を抜け、発電機の唸り声が聞こえてくると、ガスの中に三角形の槍の穂先が浮かびあがる。
槍ヶ岳山荘はオープンしているものの、夏山シーズン前なので、登山客はまばらだ。そのかわり、工事をしている大工さんがたくさん見える。財布が暖かい一部のメンバーは山荘のコーヒーで3000mのコーヒーブレークを楽しむ。なんとも贅沢な今回の山行だ。
とりあえず、コーヒーでいっぷく(贅沢だなー)
チェックインを済ませ、一息入れるとずいぶん元気になってきた。あたりはまだガスっているが、とりあえず穂先(頂上)まで出かけましょう。自分達の他はハシゴを整備している工事屋さんだけが山頂部にいるだけ。夏場は順番待ちで2時間かかることもあるというのが信じられない。
岩に手をかけ、足をかけ、ハシゴを登って行く。空身なので体は軽いが、ハシゴを一気に登ると息が切れる。
小槍?
夏はここが渋滞になるという・・
振り返ると槍ヶ岳山荘の全容が見下ろせる。狭い稜線にへばりつくように立っている小屋は、良くこんなところに建てたな~と感心してしまう。
頂上までは20分ほどで到着。予想通り貸切状態。到着した時はまだガスっていたので、昼寝をしてガスが晴れるのを待つ・・・。で、待つ事20分、ガスがだんだん晴れてきてあたりが見渡せるようになってきた。山頂の祠の前で記念撮影。
ガスが晴れた~
そろそろゴハンの時間も近づいているので降りましょうか、ということで下り始めると、西の方から青空が見る見る広がってきた。もう少し山頂で粘っていればよかったかな~。去年歩いた三又蓮華から双六岳が雲海の中に浮かんでいる。
穂先を見上げる
山荘に戻る頃には雲はすっかり晴れあがり、あたりは大パノラマが広がっていた。しかし、雲の動きは早く、見下ろす槍沢のカールには雲が湧き上がってきている。
夕食前の僅かな時間も、幸運にももたらされたこの絶景を、目に、カメラに焼き付けるのにみんな精一杯。
夕食前の僅かな時間も、幸運にももたらされたこの絶景を、目に、カメラに焼き付けるのにみんな精一杯。
槍沢をガスが登る
もう一度、青空に槍!
小屋に戻ると夕食の準備が出来ていた。今日の泊り客は十数人のよう。この梅雨の晴間に槍ヶ岳にいることが出来た幸運な人たちだ。夕食は決してご馳走ではなかったが、この場所で暖かいゴハンと味噌汁が食べられるのはなんと贅沢なんだろう。さすがに疲労のせいか食欲が無かったので、ゴハンのお代わりは一杯だけにした。
夕食の後、夕焼けを見ようと外に出てみたが、あたりは濃いガスに覆われていて何も見えなかった。明日の朝焼けに期待しようということで、今日の行動はおしまい。宴会をすることも無く、めいめいが静かにアルプスの夜を楽しみ、いつの間にか眠ってしまった。
続く