雪渓歩き
<メンバー>
サークル
<山域>
<コース>
「槍ヶ岳が一番美しいのは6月です」そう主張するBやんが企画する「梅雨の晴間に槍の穂先で昼寝をしよう」山行に2年続けて申し込んだ。昨年は雨の為中止になったが、今年は土壇場になって土曜日が晴れマークに転じる。これは日頃の行いの良さが天に通じたかと、素直に幸運を喜び、ザックを担いで、酒臭さでいっぱいの金曜の夜の電車に飛び乗った。
一宮から車に乗り込み、一路、新穂高温泉へ。夕方の天気予報でも翌日の晴れは変わらなかったが、以前空はぐずついている。新穂高温泉に着く頃は濃い霧に包まれている。どうなることやら・・と思いながら、少しでも睡眠時間を確保する為、駐車場にテントを張り、急いで潜り込む。近くを流れる沢の音が気になるかと思ったが、すぐに寝付いてしまった。
翌朝、4時に目を覚ますとテントがぐっしょり濡れている。寝ている間にも結構雨が降ったようだ。空を見上げると雲が結構な速さで動いているが、もう雨が降る気配ではない。よっし!
テントを撤収し、朝食を詰め込み、いざ出発。夏至に近い為、朝の5時でも充分に明るい。
新穂高ロープウェイの駅で登山届けを投函する。空を見上げると嶺々には朝日が当たり始めている。
はるか稜線
最初の休憩をとっていると、空はいつの間にか濃い青色に染まり、残雪を纏った頂がこちらを見下ろしているように見える。
谷沿いに林道を進む。気がはやる為か、いくぶんハイピッチになる。白出沢を過ぎ、滝谷に出会うところで激流に行く手を阻まれる。
夏のハイシーズンには橋が整備されるそうだが、今は雪解けの増水か雪崩で壊れたまま。渡渉ポイントを探すが、なかなか見つからない。仕方がないので空荷で飛び越え、ザックを投げるという荒業を使う。飛び越えるのがどうしても怖いというメンバーは、靴を脱いで、身を切るような冷たい水の中を渡渉。
滝谷のはるか上流にはジャンダルムの丸い坊主頭のようなシルエットが浮かんでいる。
滝谷の激流
ジャンダルム
滝谷を越えると登山道らしくなってきたが、まだ傾斜は緩やかで鼻唄混じりで歩く事が出来る。道端の花の写真を撮りながら歩いていると、開けた場所に立派な小屋が現れた。槍平小屋だ。営業は7月からなので、今は閑散としている。テン場に越を下ろして少しだけのんびりする。
イワナシ
槍平を過ぎると徐々に雪渓が現れだした。雪の斜面のトラバースはなかなか面倒だ。雪渓が広がりだすところで、アイゼンを付け、雪渓歩きに切り替える。太陽もぎらぎらと輝きだし、照り返しがきつい。日焼け止めとサングラスを忘れないでよかった。
雪渓に下りると、ずっと谷通しで歩くことになる。谷底なので展望は無く、上を見上げるか下を見下ろすしかない。上を見上げると紺碧の空へ、雪の道が延々と続いているように思える。涼しいはずの雪渓歩きも、傾斜がきつくなるにつれ、汗が噴出してくる。高度が徐々に上がって来ると、左手の稜線の向こう側に笠ヶ岳が見え始める。
再び笠ヶ岳
既に出発してから7時間を経過している。傾斜がきつくなるにつれ、みんなの口数も減り、隊列もばらけてくる。私も写真を撮るふりをして休憩をし、なんとか登って行く。日差しに汗だくになり、息も絶え絶えに歩く。気温は25度を越え、汗が滝のように流れ落ちる。
照りつける日差しに焦げそう・・
そのうち、みんな自分の足元だけを見ながら歩くようになる。頭の中で休憩するまでの歩数を数えながら歩いて行くが、100歩から50歩になり、ついには30歩毎に息を切らす始末。高度が2500mを越えると急にしんどくなったような気がする。時計と高度計を何度も何度も繰り返し見るが、数字はいっこうに増えてこない。見上げると雪渓はどこまでもどこまでも続いているように見える。
歩き始めて8時間を経過する頃、ようやくはるか先の岩の上に人工物らしき物体が見える。どうやらあれが槍ヶ岳山荘のようだ。目標が見え始めるといくぶん元気になった気がするが、その元気もすぐに息切れ・・。このままで果たしてたどり着けるのか・・と、なんともマイナスな思考に取り付かれながらも、一歩一歩足を進めて行く。
果たして、小屋にたどり着くことが出来るのか?