晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

雨乞岳 強風と青空のスノーハイク 2007.02.04

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 強風の中を行く

 

<メンバー>
山仲間

 

<山域>

 

<コース>
朝明~根の平峠~コクイ谷出合~七人山~東雨乞岳~クラ谷~武平峠~湯ノ山温泉

 雪山の経験が無いというD君。スノーシューを買ったので是非雪山へ出かけたいという。それならば、と雨乞岳へ出かけることにした。というのもD君は去年まで学生だったという若者、単独では敗退覚悟の難コースも強力な援軍がいれば成功の確率もかなり高くなるだろうともくろんだ。

 

 前日までの変則勤務で体調はイマイチだが、それでも山へ行くとなると気分が軽くなる。朝5時の目覚ましで飛び起きると、伊勢湾岸を飛ばして四日市へ向かう。そこから湯ノ山温泉に車をデポし、朝明へ向かう。

 

 この時期の朝明、朝の7時には当然車も無く、伊勢谷の奥まで車を進める。身支度をして出発するが空はどんより曇り、雪がぱらついている。天気は快方に向かうという予報を信じて根の平峠を目指す。

 

 昨夜降った雪のせいか、登山道にトレースは全く無く、あるのは鹿と兎の足跡だけ。ただラッセルをするほどの積雪では無いので1時間たたずに根の平峠に到着。

 

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伊勢谷、どんよりとした天気

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昨夜の雪のせいか、トレースは無し

 

 根の平峠の積雪は10cm程度で、道標の字も完全に読める程度。ここからはなだらかな下りになるので、せっかくだからとスノーシューを装着する。

 

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根の平峠 雪は10cm程度

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根の平峠を越えると雪原が広がる

 
 峠を越えると適度な積雪があり、思いがず快適なスノーハイクが楽しめる。新雪の斜面をフカフカと進むのは気持ちがいい。分岐を間違えないように左折し、神杉を通過。 
 
 昔の街道だっただけに歩きやすい場所を選んで道をつけているのが良くわかる。
秀吉は伊勢侵攻の時に雪の鈴鹿越えをやったというが、ここを人馬が通ったのだろうか・・。

 

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この辺りの集落の御神木だったという神杉

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雪に埋もれた街道を行く

 

 上水晶谷出合を過ぎると、道も斜面に刻まれたトラバース道になるので慎重に進む。少してまどったが2時間ほどでコクイ谷出合へ到着。なかなかいいペースでここまで来る事ができた。

 

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この辺りになると雪も深い

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コクイ谷出合

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愛知川の流れ

 

 河原で小休止したあとはいよいよ、今日のメインイベント、七人山へ高低差300m弱の直登である。雨乞へは千種街道を更に進み、杉峠経由が一般的だが積雪期は谷筋よりも尾根の方が歩きやすい。

 

 幸い雪質も締まった雪の上に数十センチの新雪が積もった程度なので、壷足でも快適に登れる。

 

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七人山へ直登

 

 このルートはハリマオさんが去年考えついたルートだが、思いの他歩きやすい。傾斜も御池岳の直登り程ではなく、尾根筋も明瞭だ。快調に高度を稼ぐと次第に空が明るくなり、青空も見えてきた。途中、おとぎばなしに出てきそうな巨木が我々を出迎えてくれる。

 

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明るくなると同時に風が強くなってきた

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途中で見た大木

 

 標高1000mを越える頃には樹氷が現れはじめた。そらはどんどん明るくなってきて青空が広がる。この冬初めて、青空と樹氷を同時に楽しめるコンディションに恵まれそうだ。標高と共に気分も高揚してくる。

 

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青空と共に樹氷

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御在所が目の前に

 

 傾斜が緩くなり、ブナ林が現れると七人山の頂上部だ。以前秋のテント泊をしたことがあるが、相変わらずいい雰囲気。枝には樹氷が付き、幻想的な氷の森が広がる。

 

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七人山はブナの樹氷

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樹氷の森

 

 だいぶ空腹になってきたので、風を避けられる樹林の中で昼食。おにぎりは凍るとまずいので薄皮クリームパンと薄皮チョコパン。暖かいインスタントスープで体を温める。

 

 一息つき、目指す雨乞岳は何処かなと見渡すと、正面の巨大な白い山塊が聳えていた。標高差はあまり無いはずだが、その迫力に圧倒される。
これから、あの斜面に登ると思うと闘志がわいてくる。やるぞーと思いながら、七人山のコルへ雪の斜面を転がり降りていった。

 

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雨乞岳の巨体が聳える

 

 樹氷の森で腹こしらえをした後、いよいよ雨乞岳を目指す。七人山から高低差はあまり無いはずだが、その巨体に目を見張ってしまう。一気に七人山のコルまで駆け下りると後はひたすら登るだけ。

 

 気温が低いので雪はサラサラの片栗粉のようで、スノーシュー でも結構潜ってしまう。ともあれ、足跡の全くついていない斜面に足跡を付けて行くのは何ともいい気分。

 

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どーんとノートレースの雪の斜面
 
 高度が上がると共に、周りの山々を眺める余裕も出てくる。右手のイブネ・クラシの大地も真っ白に染まっている。

 

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イブネ・クラシの台地

 

 雨乞岳頂部は風が強い為か、背の高い木は生えていないので展望が良い。夏は厄介な笹も今は雪の下。太陽もピカピカですこぶる気持ちいい。一歩一歩歩くたびに喜びを踏み締める。

 

 ただ、風が猛烈に強く、雪が顔に当たると痛いのなんの・・。目出し帽とゴーグルが欲しいなと思った。

 

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樹氷が輝く

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がんばれD君

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頂が近づいてくる

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青空~

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太陽が眩しい

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地吹雪

 

 東雨乞岳の山頂は地面が露出していた。風が強すぎて雪がつかないのだ。一方、足元の道標にはびっしりと成長した氷がついている。

 

 風が強くなると普通には立っていられないほど。20m/s以上はあるかもしえない。カメラが冷えるのを気にしながら写真を撮る。

 

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東雨乞岳山頂

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東雨乞からのパノラマ

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雨乞岳の勇姿

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北に連なる鈴鹿の山々

 

 さて、ここまでの所要時間は昼食込みで5時間と少し、そろそろ戻る時間を気にしなくてはいけない。強風の中、雨乞岳へ向かって歩き出した。

 

 が、吹きさらしの稜線が風の為、とても歩けたものではない。白い頂を目の前にしながら泣く泣く?撤退を決める。再び、東雨乞の頂上で記念撮影。

 

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本峰を目指すも強風で断念

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記念撮影も耐風姿勢

 

 帰路は来た道を戻ろうとも考えたが、夏道の最短コースであるクラ谷から武平峠へ抜け、湯ノ山温泉へ向かうことにした。しかし、これが大誤算。谷はたっぷりと雪に埋められており、谷沿いの斜面につけられた道を探りながら歩くのはとても難渋した。複雑な地形なのでスノーシュー も使えず、二人とも壷足で登ったり下ったり。疲れたー。

 

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雪に閉ざされたクラ谷

 

 ようやく、植林帯に入り武平峠が近づいてきたかな、と思うと鎌ヶ岳が夕陽に輝いていた。日が長くなったといいながら、もう直ぐ日没。結構ギリギリだったな~。

 

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夕日に輝く鎌ヶ岳

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武平峠の様子

 

 スカイラインからは何も考えたくないので、距離はロスするがひたすら舗装道路上を歩いて湯ノ山温泉まで。湯ノ山温泉から朝明に向かい車を回収する頃にはもう真っ暗になっていた。

 

 トータルの行動時間は10時間程。体はくたくたになったが、気分はすっきり、いやなものを全部流したような気がする。やっぱり山はいい。それが晴れならもっといい。改めてそう思った山行だった。

 

 D君、ありがとう。

 

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今回の地図