晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

御池岳 雪の奥の平探訪 2007.01.14

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つかの間の青空に輝く雪原

 

<メンバー>
単独+強力助っ人2

 

<山域>

 

<コース>
山口~木和田尾~白船峠~真の谷~奥の平~御池岳(丸山)~カタクリ峠~コグルミ谷~R306~山口

 

 悪天候により一度は敗退した御池岳。リベンジを固く誓ったがその機会は翌日に訪れた。土曜日に帰宅し一服した後、天気予報を見ると明日は今日よりも天気がいいらしい。「鉄は熱いうちに打て」ではないが、闘志があるうちに再挑戦しておこうと、翌日も御池岳へ出かけることにした。

 

 今回のルートは木和田尾から白船峠。もし時間がかかり、タイムオーバーになれば藤原岳を周回するつもりだ。山口の給水場には既に数台の車が停まっている。どうやらハンターらしい。少し緊張して先を進む。

 

 最初に歩く谷筋には雪は全く無く安心したが、前日の疲れかなかなかペースが上がらない。後から歩いてきた単独の男性(後で強力な助っ人になる)にあっさり抜かれる。

 

 しばらくすると猟銃を持ったハンターが歩いてくる。鹿を追っているので注意して欲しいと言われ、うなずいたが何をどうすればいいのかわからない。とりあえず登山道を外れるのはやめよう。

 

 尾根に上がると5cmくらいの積雪だが、難渋するほどではない。先行するトレースの後を歩く。太陽が登り朝日に伊勢湾が輝いている。ひょっとしたら今日は当たり日か!期待が膨らむ。

 

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青空にそびえる鉄塔

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朝日に輝く伊勢湾

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伊吹山も白い

 

 坂本谷との分岐の手前で話し声が聞こえる。先行者は一人だけだと思っていたらもう一人いるようだ。ん、声に聞き覚えがあるなーと思ったら、先方から「たろーさん?」と聞かれた。ヤブコギオフ会でご一緒した「伊勢山上住人」さんだ。伊勢さんと話している先ほど私を追い抜いていった人は「ARI」さんといって、やはり伊勢さんと知り合いの方だった。みんな奥の平を目指しているという。即席パティーが完成し、この後、3人で歩くことになる。

 

 予想時間よりも大幅に早く、白船峠に到着。これで御池行きの成功の可能性がますます高まる。

 

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白船峠 そんなに雪は多くない

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ハリマオさんの道標

 

 白船峠でコースについて少し打ち合わせをする。ここから真の谷へ降りて急斜面を直登するか、稜線を経由してカタクリ峠から正規ルートで攻めるか?

 

 私は真の谷へ降りるつもりでいたが、フカフカの雪に恐れをなしていたので、稜線コースかなと思っていたが、ARIさんの「私、直登好きなんです」の言葉で直登コースに決定。

 

 スノーシューをつけて一気に谷を下る。全く踏み固められていない雪の上を滑るように進む。ふわふわとして全く気持ちいい。あっという間に真の谷へ到着。

 

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雪たっぷりの真の谷

 

 ここから約300mの標高差の雪の壁をよじ登ることになる。ARIさんは全くの新雪の斜面をワカンで直登していく。強い~。

 

 私はスノーシューで斜面を斜めにトラバースしながら進むが、苦労の割りに高度が上がらず、傾斜が急になったところであえなくダウン。壷足になり、ARIさんのトレースを使わせてもら。

 

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ワカンで直登のARIさん 強い~

 

 ワカンのトレースの後と言っても壷足では更に沈むし、私はヘビー級なので沈みは更に激しい。私の後を歩いた伊勢さんは「階段を歩いているようだ」と形容してくれた。それほど斜面をしっかり踏み固めながら息も絶え絶えに斜面をよじ登る。ふと横を見ると太陽が差し込み、木の影が映る雪面が美しい。

 

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雪が美しい斜面

 

 同じくスノーシューを脱いだ伊勢さんと先頭を交代しながら歩くこと1時間半、周りに樹氷が見え始めた。奥の平の光景に期待が膨らむが、今は目先の一歩をどう進めるかで精一杯である。「交代しますか」の声にすぐに飛びついてしまう・・・。

 

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高度が1000mを超えると樹氷が見える

 

 視界の先のほうにようやく、地表と空の境界が見え始めた。あれを越えれば奥の平だ!。そう感じてからが長い・・。振り向けば背後の藤原岳、天狗岩、頭陀ヶ平がくっきりそびえている。

 

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あれを越えれば

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藤原岳、天狗岩、頭陀ヶ平

 

 直登を始めてから2時間弱でようやく奥の平に到着。まわりの地形をみると南部のP1194に上がってきたようだ。よりによってこの辺りで一番高いところに上がってきたことになる。

 

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いきなり氷の森が出迎える

 

 一息入れたところで、一気に空腹が襲ってきた。が、空は曇ってきてガスがかかり奥の平は白一色の世界。もう少し景色のいいところを探そうと歩くことにする。ここで一旦3人ばらばらになり、思い思いの行動をとることに。

 

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ガスが出てきて白一色に

 

 しばらく歩いたが、ガスはいっこうに晴れる気配が無いので、森の影で昼食をとる。今日はパンとラーメン。おにぎりは凍ってしまうので美味しくないのである。雪の中で食べるラーメンはたとえ何も入っていない出前一丁であっても最高に美味い。

 

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何も入っていませんが最高のラーメン

 

 体が温まってきたところで、雪の奥の平を堪能することにする。テーブルランドはドリーネが独特の起伏を生み出し、真っ白な曲面を描いている。樹氷の森が幻想的な気配を更に高める。太陽はガスの中からぼんやり見えるだけだが、ほんの一瞬、青空が覗いたりする。ここからはテーブルランドの端を進み、丸山まで歩こう。さて、どんな景色が広がるのか楽しみでいっぱいになる。

 

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雪原スノーハイクへ出発

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本当に一瞬の青空

 

 ラーメンと薄皮アンパンでエネルギーを補充した後は、いよいよテーブルランドのスノーハイクだ。テーブルランドの西端を北に向かって歩く。以前キャンプした幸助の森を抜け、ボタンブチへ。

 

 テーブルランドの上は相変わらずガスがかかり、なかなかシャッターチャンスが訪れない。(似たような写真ばかりですがしばらくお付き合いください)

 

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雪のテーブルランド①

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雪のテーブルランド②

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ドリーネ

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静寂の白の世界

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テーブルランドの端を進む

 

 ときおり、さっとガスが晴れて日差しが見えるが、ほんの数秒の事。カメラを構えるとすぐにガスがかかる。カメラを出して構えていると電池がへたるので常に懐に入れておかなければいけない。

 

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モノトーン

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幸助の森へ

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雪のテーブルランド③

 

 水墨画か白黒写真のようなモノトーンの世界を黙々と歩く。雪に周りの音も吸い込まれているようで、不思議な静寂の世界だ。日が差すと、いままで平坦に見えていた景色が急に立体的になる。言葉を失う景色が広がる。

 

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天狗の鼻よりボタンブチ

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雪のテーブルランド④

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雪のテーブルランド⑤

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雪のテーブルランド⑥

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この先は夕陽のテラス

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また一瞬の青空

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丸山へ

 

 あまりのんびりもしていられないので、丸山からカタクリ峠に向かって下る。9合目からの登りの谷は、これの新雪に埋もれており気を抜くと腰まで埋まってしまう。ここを登りのコースに使っていたらと思うとゾットする。

 

 どこでも歩ける斜面を適当に下っているとカタクリ峠から真の谷へ降りるあたりに出てきた。カタクリ峠まで少しだけ登り返し、ここで伊勢さんを待つ。
15分ほどで伊勢さんが追いついてきた。ここで記念撮影~。

 

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素敵な出会いに

 

 この時点で既に15時。白船峠へ向かっていては日没の恐れがあるので、コグルミ谷を下って国道を歩くことにする。

 

 シリセードを交え、1時間かからず国道へ。あとは退屈な舗装路を1時間半歩かなければいけないが、今日は一人じゃないので気が滅入ることは無い。

 

 下りてくるにしたがって青空が見えてくる。今日は偶然の出合があってすばらしい山行になった。(一人では到達できなかっただろう)。

 

 今日、ご一緒していただいた伊勢山上住人さん、ARIさんに感謝すると共に、素敵な出会いを与えてくれた山の神様にありがとうの気持ちでいっぱいになった

 

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今回のコース