晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

御池岳 緑に包まれて 2006.06.04

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T字尾根のぶな


<メンバー>

単独

 

<山域>

 

<コース>
コグルミ谷~カタクリ峠~真の谷~T字尾根~奥の平~真の谷~カタクリ峠~真の谷



 6月に入るとさすがに鈴鹿はきつい。高温多湿の低山はヒルの巣窟になるし、アブやハチなども周りを取り囲むように集まってくる。風の無い日に樹林の中を登って行くと熱中症にもなりかねない。沢登に胸が躍る季節が近づいてきた。

 

 しかし、今年は天候が不順なせいでこのところタイムリーな山行ができていない。本来であれば6月は花も終わり、鈴鹿の山は森に包まれるが、今年はひょっとしたらまだ残っているかもしれない・・。

 

 来るべき遠征への体力維持も兼ねて、緑がずいぶん濃くなっているだろう御池岳へと向かう。

 

 ヒルの活動が活発になる目安は最高気温25℃。きょうは曇りで湿度も高く、あの吸血鬼は元気いっぱいだろう。やつらが動き出す前に行動しようと思い、早朝5時30分にコグルミ谷をスタート。

 

 さすがに風はひんやりとして心地よい。足元に花は少ないが頭上の鳥のさえずりがにぎやかだ。まるで鳥の声のシャワーを浴びているようだ。

 

 コグルミ谷ではヒルは見かけず、まずは一安心でカタクリ峠に到着。ゆるゆると真の谷に下って行く。

 

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緑滴る真の谷①

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緑滴る真の谷②


 真の谷に前回着た時は1ヶ月前だった。そのときは木の枝にも葉はなく、まるで冬の疎林のようだったが、今はむせるほどの緑が谷中を埋めている。鳥の声が盛んに聞こえるが葉が茂っているので姿は確認できない。テント場にもなる河原(?)を過ぎ、御池岳の山腹に取り付く。

 

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テント場近くにある大きな木


 このあたりにはバイケイソウが多くなってくる。艶のあるみずみずしい緑は力強さを美しさを感じさせるが、これは毒草である。鹿も食べないので大いに繁殖してしまうのだろう。良く見るとこのあたりの地面に生えている緑のほとんどはバイケイソウトリカブトだ。

 

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地面を覆うバイケイソウの群落


 谷を離れ、斜面をトラバースしていくと自然と高度が上がって行く。ところどころに獣道とも杣道ともつかない薄い踏み跡が途切れ途切れにあるが、足場の悪い急な斜面をとりあえずトラバースして行く。足が常に斜めになっているので疲れる。

 

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トラバース・・

 

 時々、行く手を真新しいガレがさえぎる。突然上のほうから落石が降ってくる。あぶなく大怪我をするところだった。上を見ると鹿の親子がいる。落石発生の犯人は彼らのようだ。

 

 足場の悪いトラバースを行けども行けども目新しいものは何も見つからない。あるのはバイケイソウトリカブトばかり・・。フタリシズカの群落が変わった花を見せてくれている。

 


 汗をカキカキ、もがきながらも進んで行くと急に開けた広場に飛び出た。なんだか見覚えがあると思ったら、御池岳から土倉岳に落ち込む鞍部にでたようだ。御池岳テーブルランドの裾をぐるっと回ってきたことになる。見上げると、テーブルランドははるか頭上。南に藤原岳がかすんで見える。

 

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テーブルランドの端が見える

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藤原岳

 

 このまま何の盛り上がりも無いまま、帰路に着くのはつまらないのでT字尾根のぶな権現に挨拶して行くことにする。これもまた足場の悪い斜面をトラバースし、ぶな権現に到着。ぶな達も今日は葉が生茂り、どっしりと力強く見える。ここで昼食をとり、しばしうとうとする。

 

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木漏れ日あふれるぶなの広場

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今年も来たよ、と声を掛ける


 あまり長居をしてヒルの襲撃を受けてもいけないので、頃合をみてテーブルランドの上に這い上がる。途中にイワカガミと名前を知らない小さな花を写真に撮る。

 

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この花だけは何処にでも咲いている

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タニキキョウ

 

 テーブルランドに這い上がるとそこには見覚えのある無人の台地が広がっている。普段なら聞こえてくるボタンブチからの談笑の声も今日は無い。さすがにこの時期にここまで来る人は少ないか。

 

 笹原の中にぽつんと浮かぶ岩の上でしばらくぼんやりしていたら、急に人恋しくなってきた。長居は無用だ。下山しよう。

 

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天狗の鼻、ボタンブチを見る

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静まりかえる奥の平

 

 テーブルランドを横切り、適当に真の谷方面へ下る。バイケイソウの海を越え、急な斜面を駆け下りると再び真の谷のテント場に出た。あとは元来た道を戻るだけだ。

 

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バイケイソウの海、ジャングルのよう


 カタクリ峠まで来るとあともう少し、今日は暑く大汗をかいた。全身ずぶぬれ状態だ。長命水で水分を補給し、コグルミ谷の登山口へ着いたのはまだ13時過ぎだった。

 

 これでしばらく鈴鹿から離れることになるか。いや、おそらくそうはならないだろうが、次に御池岳に来るのは紅葉の時期だ。冬から初夏にかけてたっぷりと歩いた山としばしのお別れだ。