屋久島 縄文杉から大株歩道 雨に煙る太古の森 2006.03.12
<メンバー> 夫婦
<山域・形態>
屋久島・ハイキング
<コース>
新高塚小屋~高塚小屋~縄文杉~ウィルソン株~大株歩道入り口~(森林軌道)~荒川登山口)~荒川分岐(バス停)
4時ごろ早立ちのパーティーが準備する音で目が覚めた。まだ、もう少し寝ていよう・・次の瞬間、目が覚めたときは6時を回っていた。しまった。予定では6:30には出発したかったが仕方ない。
重い体を動かして出発の準備をする。天気予報では「昼から雨」だったが、既に降り始めているようだ。カッパを着込み、雨の中歩き始める。
森の中は薄暗い
約40分ほど歩くと縄文杉の最寄にある高塚小屋に到着する。中の広さは土間を入れて6畳ほど。収容人数はせいぜい16人ほど。この小屋に泊まることを前提に予定を組むのは少しリスキーだと思う。
高塚小屋
ここから縄文杉へ下って行く道は木で作った通路、階段が整備されていて、地面の上をほとんど歩かなくてよくなっている。山歩きとしては興ざめの感もあるが、年間6万人も登山者が訪れるのであれば森の保護の為仕方ないだろう。
高塚小屋から10分ほど歩くと急に木のプラットホームが現れた。ここが今回の旅のもう一つの目的地である縄文杉だ。保護の為、鑑賞台のようなプラットホームから眺めることになる。
ハイシーズンは余程混雑するのだろう、「立ち止まるな」や「譲り合いましょう」「写真撮影はここから」などの標識がうるさい。幸い、今日上がってくる登山者はまだ到着する時刻では無。周りには小屋で一緒だったヒッチハイクの2人組みがいるだけだ。
改めて「縄文杉」を眺める。言葉を忘れる・・見とれてしまう。木の大きさなのか、7000年とも言われるその歴史なのか、枝葉を広げる姿なのか・・そのいずれが理由なのかはわからないが、とにかく圧倒される。神々しい。
縄文杉①
縄文杉② 口をあんぐりあけてしまう
縄文杉③(タテパノラマ)
この後も見所はたくさんある。縄文杉を後にして木道の上を歩き出す。雨はしとしと降っており、気温もそれほど高くない。しかし、苔むした巨木の中はむしろ雨の方がよく似合う。
妻も興奮を隠せないようだ。背中の荷物の重さも忘れ、跳ねながら歩いて行く。
苔むした巨木の森
雨の中でも平気です
巨人の森、人が小さく見えます
最初は丁寧に答えていたが、そのうち適当に「あと1時間くらい」と応えることにした。
2本の杉の枝がつながっている珍しい「夫婦杉」など、名前のあるもの、無いもの、いずれも見事な巨杉が次々と現れる。「へー」とか「ふーん」とか、感心ばかりしながら歩いて行く。
妻もご機嫌です
更にすれ違う登山者が増えてくる。ガイドにつれられたツアー客もいれば、若い学生もいる。中高年の単独者もいる。あたりの雰囲気は一気に観光地のようになってきた。もう少し歩けば「ウィルソン株」だ。
縄文杉から下ると、すれ違う登山者はかなり多くなってきた。相変わらず「あとどれくらいですか?」と聞かれる。急な斜面にも木の階段がついており、雨でも足を滑らせる心配は無いので快調に飛ばす。森のあちらこちらから水が湧き出している。飲む水は心なしか甘く感じる。
湧き出す水もいつもと違う(感じがする)
たくさんの人の声が聞こえだすとそこはウィルソン株である。豊臣秀吉に献上するために切られたというその巨杉は、縄文杉をも越える大きさである。切り株しか無いのが残念だ。株の中は空洞になっており、中には祠がある。確かに神様が住んでいても不思議では無い。
ウィルソン株①
ウィルソン株②(株の空洞より雨を見上げる)
ウィルソン株③
翁杉
快適な線路道
線路は河を越え、森を抜け走っている。傾斜はゆるく平坦な道となる為、背中の荷物も気にならない。途中、鹿が現れる。うっそうとした森ではなくなっているが、空は明るく、気分は良い。「線路は続くよ何処までも~♪」と鼻唄まで出てくる。
屋久鹿が現れる
川を越えて
森を抜けて
線路は続く
この道で最後の名のついた杉となる「三代杉」が現れた。この森では倒れた木の上に新たな若木が育つという世代更新が行われるという。この杉は三代に亘って更新されているのだそうだ。
三代杉
林業が盛んだった頃には大きな集落があったという小杉谷を越え、幾つかの鉄橋と手掘りのトンネルを抜けると13:00頃、荒川登山口に到着した。
長い長いトロッコ道
手堀のトンネル
荒川登山口ではたくさんの車が止まっていた。最も利用者の多い登山口だったので、バスがあるだろうと高をくくっていたが、17:00までバスは無い。雨の中、4時間も待っているのはつらい。誰かに同乗させてもらうのも考えたが、日帰り登山者が帰ってくるまではまだまだ時間がかかるだろう。
疲労がピークに達している妻の足は重く、まだ見ぬ停留所までどれくらいかかるのか不安だったが、1時間半ほどでバス停に到着。ほっとする。
バスの時間までは1時間ほど。着替えをし、暖かいラーメンを食べ暖をとる。精神的にも体力的にも一息つけた。このとき食べたラーメンの味は今まで食べた中で一番美味かった。
やっとたどり着いたバス停
公衆電話から、安房でレンタカーを手配し、バスに乗る。安房まで約40分。乗客は我々2人だけだった。暖房のきいたバスに揺られていると、楽しかった二日間の山旅が思い出される。美しい光景を思い出し、2人「よかったね」を繰り返す。
バスはゆっくりと街に下って行く。
バスはゆっくりと街に下って行く。