晴山雨読記 Vol2

沢登り、雪山、時々山登りの備忘録

屋久島 晴天の宮之浦岳 2006.03.11

f:id:ikuyayuuki:20200430224527j:plain

 巨石の転がる草原 宮之浦岳山頂付近

 

<メンバー>
夫婦

 

<山域・形態>
屋久島・ハイキング

 

<コース>
淀川登山口~淀川小屋~花之江河~栗生岳~宮之浦岳~焼野三叉路~(宮之浦歩道)~新高塚小屋(泊)


f:id:ikuyayuuki:20200430224625j:plain

今回の行程
(青線:タクシー利用 赤線:歩行)
 
 仕事柄まとまった休みを取れることはめったに無い。しかし、辛抱して働いていると良い事はあるもので、会社から10日間の休暇(の権利)と旅行券を貰った。行き先を決めかねていたが、山歩きを始めた時から行きたかった「屋久島」に行く事にした。今では妻も充分歩くことが出来るだろう。スケジュールの関係上、休暇は土日の前後に1日ずつくっつけて4日間。3泊4日の強行軍となる。

 

 飛行機で鹿児島空港に到着。まずはガスカートリッジを入手しなくてはいけない(飛行機は持ち込み禁止)。鹿児島市内行きのバスに乗り、天文館で下車。バス亭から徒歩2分の「好日山荘天文館店」でガスを購入。屋久島行きの船(トッピー)の出発までしばし時間があるので、店にザックを預けて近くの店で昼食をとる。

 

屋久島へ行く際の山道具の調達は好日山荘天文館店が便利だ。トッピー発着場まで歩いて20分ほどで行ける。ガスは屋久島に入る前に調達しておくと安心。

 

 歩いて鹿児島港北埠頭に来ると目の前に桜島雄大な姿を見せてくれる。青空の中にそびえるその姿は、今回の山旅が楽しいものになる事を予想させる。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224444j:plain

鹿児島のシンボル桜島 男らしい

 

 鹿児島港から屋久島へは2時間ほど。種子島経由便を使ったので安房(あんぼう)に18:00ぐらいに到着。屋久島内の移動はレンタカーが主流となっているようだが、今回は縦走を計画しているのでレンタカーは使わない。尾之間にあるホテルまで屋久島交通の定期バスを利用する。

 

 ホテルは登山の基地にするにはもったいないぐらいの豪華ホテルだ。翌朝は早立ちなので、弁当とタクシーの手配を確認。登山客が多い島だけあってホテル側の対応も手馴れたもの。5時半出発でも弁当(朝食+昼食)を快く引き受けてくれた(事前に予約が必要)。

 

 ホテルから淀川登山口まではタクシーを利用する。さすがに登山口までのバスは無い。タクシー乗車時間は1時間15分ほど。淀川登山口まで料金8800円。

 

 淀川登山口からの往復は宮之浦岳への最短コースとなる。林道の終点にトイレがあり、若干の駐車スペースはあるが、大きなものではない。ホテルで準備してくれた朝食を食べて出発。さすがに世界遺産に登録されたせいなのか「環境省」の名前の入った道標がたくさん設置されている。

 

 40分ほど歩くと淀川小屋、既に先行していたパーティーと小屋泊まりの単独の若者がいる。小屋の裏にある川は透きとおり、朝靄のなかで神秘的な景色を見せてくれる。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224448j:plain

いきなり神秘的な景色

 

 明瞭な登山道を歩いていると開けた湿地帯にでた。小花之江河だ。まだ季節が早いせいか、みずみずしい緑は期待できなかったが、大きな枯れ木がこの島の森の深さを連想させる。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224453j:plain

小花之江河

f:id:ikuyayuuki:20200430224459j:plain

大きな木 何が聞こえる?

 

 ゆっくりと高度を上げて行くと段々展望が開け、大きな石が目に付くようになる。家ほどの巨石が山肌やピークの上に鎮座している。自然以外の不思議な何かが働いていたような、そんな雰囲気である。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224505j:plain

投石平付近、展望が開けてきた

f:id:ikuyayuuki:20200430224509j:plain

青空がまぶしい

 

 本高盤岳の脇を通り花之江河を過ぎると、道は多くのピークの間を縫うように進んで行く。鹿児島以南の南国なのに谷には雪渓が残っている。雪解け水が沢を潤し、風を冷たくしているようで心地よい。トンネルを踏み抜かないように用心しながら歩く。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224513j:plain

南国の3月なのに雪が!

f:id:ikuyayuuki:20200430224518j:plain

踏み抜かないように気をつけて

 

 いつの間にか高度は1700mを越えている。宮之浦岳まで200mと少しだ。低木もいつの間にか消え、笹原に巨石が広がる不思議な庭園の中を歩いているようになる。黒味岳、投石岳、安房岳、翁岳のピークが次々と現れ、ゆっくりと脇を通り過ぎて行く。いつもの山歩きとは違うスケールの大きさを感じる。いずれも頂上に巨石が乗っているのが印象的である。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224522j:plain

登山道が天空へと続く(チョットオーバー)

f:id:ikuyayuuki:20200430224527j:plain

笹原の上に巨石が転がる

f:id:ikuyayuuki:20200430224533j:plain

山頂は間近

 

 昼に近づくにつれ、日差しがきつくなってくる。宮之浦岳と思われるピークは次々と現れるが、実は違っており、肩透かしを喰う。やがて、登山道は稜線上を進むようになり、栗生岳を過ぎるとついに宮之浦岳の頂上へたどり着いた。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224537j:plain

栗生岳

f:id:ikuyayuuki:20200430224541j:plain

振り返ると不思議な光景

 

 山頂で丁度12時ぐらい。妻も最後の1時間は結構きつかったようだ。ようやく肩の荷をおろし、弁当を広げる。日本一雨の多い島の頂上だが、今日は青空が広がっている。360度の大展望をおかずにオニギリを頬張る。うまい。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224545j:plain

やっと山頂

f:id:ikuyayuuki:20200430224550j:plain

山頂からの眺め(永田岳)

 

 のんびり昼食を楽しんでいると、外国人登山者を連れたガイドさんが追いついてきた。聞けば、今日、縄文杉方面から新高塚小屋まで上がる登山者はほとんどいないと言う。(無線で連絡をとっているらしい)非難小屋泊まりは相当な混雑を覚悟していたが杞憂に終わったようだ。

 

 これからの道は、焼野三叉路を右に折れ、宮之浦歩道を尾根沿いに下り、再び樹林帯の中に入って行く事になる。明日の天気は下り坂の予報、尾根には既に雲がかかり始める。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224555j:plain

宮之浦歩道に雲がかかる

f:id:ikuyayuuki:20200430224600j:plain

宮之浦岳を望む(宮之浦歩道より)

 

 周りに木々が増えてくると急にガスがかかってきた。道には半融けの雪が残り足元はすこぶる悪い。石楠花の枝が進路をふさぎ、ちょっとした藪漕ぎ状態になる。これが登りならかなり難渋したであろう。せっかく遠征して来たのになんだか鈴鹿を思い出させる。

 

f:id:ikuyayuuki:20200430224608j:plain

木が増えてきた

f:id:ikuyayuuki:20200430224615j:plain

倒木が行く手を塞ぐ

 

 小屋までまだかなーと思いながら歩いていると、周りの木が徐々に大きくなってくる。地図を見ると「屋久杉原始林」とある。雰囲気が徐々に高まって来ると「新高塚小屋まで○.○km」の道標が出てくる。

 

 妻を励まし、「あと○分、あと○分」といっていると急に木のプラットホームのようなものが現れた。新高塚小屋に到着だ。

 

 屋久島にある避難小屋の中で最も新しく、もっとも大きい(40人収容)。ひっそりと静まり返っており、一瞬貸切かと思ったら、学生さんが2人寝ていた。今朝早く白倉小屋を出て昼過ぎに着いたらしい。宮之浦岳には明日行く予定だという。

 

 時間は既に15時過ぎ。この後入ってくる登山者もいないだろうと、適当に場所を決め荷物を広げる。他の人を気遣わずにくつろげるのが良かった。食事を作っていると結局3人の若者が到着。みな学生らしい。それぞれに夕食をとり、そそくさとシュラフに潜り込む。

 

 長旅のせいか、疲れがどっと出てきた。ウイスキーを舐め、ヘッデンで本を読んでいると妻はいつの間にか寝息をたてて寝ている。私もそろそろ寝るとしよう。幸い、この日の泊まり客に大いびきをかく者は無い。心地よい疲れに身を任せ、いつの間にか眠ってしまった。

  

f:id:ikuyayuuki:20200430224620j:plain

 今夜の寝床の新高塚小屋