鈴鹿 雨乞岳・御在所遭難捜索③ 2020.05.02
※ヤブコギネットオフ会等で何度かご一緒した事のある、緑水さん(76才男性)が4/26に登山に行き遭難し、5/2山仲間の捜索により残念な形で発見されました。このような事故が少しでも減るように、私が経験した事を共有化します。
<5/2 捜索全体の状況>
私は参加できませんでしたが、5/1の捜索でも発見には至らず、警察・消防による捜索も打ち切られました。5/2以降は完全に有志による捜索のみとなります。
消息をたってから6日。翌日からは天気が悪くなる予報だったので実質最後のチャンスかも。ヤブコギネットのメンバーをはじめ、緑水さんを知る多くの山仲間が捜索に参加しました。
事前に”つばやさん”から送信された捜索ルートのログは雨乞岳、七人山を中心にありとあらゆる尾根、谷を網羅しており、これで見つからないとはいったいどこにいるんだろうというのが正直な感想です。
そんな中、4/26のお昼ごろ、東雨乞岳と雨乞岳の稜線上を雨乞岳方面に歩いていく緑水さんらしい人を見かけたという情報が入りました。
<遭難場所についての考察>
目撃情報から雨乞岳に向かっていた事は確か。そこから水のきれいな愛知川源流を歩き、コクイ谷経由で武平峠に帰って来るつもりではと推測しました。
途中、イブネに足を延ばしたと仮定しイブネから千草街道への近道になっている佐目峠から御池鉱山跡にダイレクトに下りる谷(下重谷)、イブネから小峠に降りる辺りが怪しいかなと考えました。
4/29~5/1までの捜索範囲と5/2捜索予定
< 捜索の状況>
より捜索範囲を広げる必要があるかな~と考え、サークルのメンバーにも協力を呼びかけ鈴ハイメンバー4人で捜索チームを編成しました。
イブネ方面へは雨乞岳経由とコクイ谷から愛知川源流を遡るコースが考えられますが、長距離になるので高低差の少ない後者を選択します。
沢谷峠からクラ谷分岐を経てコクイ谷に向かいます。この辺りは地形が複雑で迷いやすいです。コクイ谷出合からは谷通しで歩くチームと登山道を歩くチームの二手に分かれて行きます。
コクイ谷出合付近
登山道チームはかなり上の方を歩いている
崩壊地
御池鉱山跡の看板で一旦合流します。登山道チームはこれから御在所に向かうというZipさんとくまさんに出会ったとの事。確かに御在所方面はまだ捜索密度が薄いです。我々は予定どおり下重谷を詰め、佐目峠目指します。
下重谷も滑落するような深い谷は無く、ここでの遭難の可能性も低そうです。佐目峠にはお昼頃到着しました。
佐目峠から東雨乞岳
ここからはイブネを経由して小峠へ降りるルートを探索します。イブネの台地はゆっくりとテント泊したくなるような雰囲気です。
イブネ
雨乞岳、七人山
銚子と銚子ヶ口
小峠への下りはかなり厳しい道で滑落の可能性もあるなあと思いながら歩きましたが、ここでも手がかりは見つかりません。小峠から上水晶谷出合に向かって下りましたが下り口はかなり荒れていて固定ロープを使います。
小峠
小峠からの下り
上水晶谷出合で今日の捜索はほぼ終了。あとは登山道を辿って武平峠まで戻ります。遠くでヘリの音が聞こえましたがさほど気にしていませんでした。
上水晶谷出合付近、いい雰囲気
千草街道の並木
スカイラインの駐車場(捜索用に開放してもらった)には16:45にたどり着きました。他の捜索メンバーはもう帰ってるかなと思ったら、まだたくさんの人が残っていて「見つかったよ」「もうヘリで回収した」「やっぱりだめだった」と聞かされました。発見場所は御在所の黒谷のゴルジュの中。Zipさんとくまさんが発見したとの事。
ルートから考えると雨乞岳から御在所に登り返し群界尾根を通って沢谷峠に向かおうとして黒谷の左岸尾根に迷い込み、谷に滑落したのではないかと思われます。昼過ぎに雨乞岳でそこから御在所に登ったという事は下山時は夕方、ひょっとしたら暗くなっていたのかもしれません。
黒谷はこんな谷です↓
発見の手がかりになると思われていたワンコは1週間近く、ずっとご主人様の近くにいたようで、無事保護されました。
ワンコは無事でした。
残念な結果になりましたが、一応家族の元に返す事が出来ました。長期戦になると遺留品を見つけるのも困難になるかなあと思っていただけに、そこだけが不幸中の幸いです。捜索に関わられた皆さん、本当にお疲れ様でした。
<コース>
武平峠西側P(6:50)~沢谷峠(8:00)~コクイ谷出合(9:25)~御池鉱山跡(10:35)~佐目峠(12:00~12:30)~イブネ北端(12:55)~小峠(14:00)~コクイ谷出合(14:55)~沢谷峠(16:20)~武平峠西側P(16:45)
今回のコース
<今回の教訓>
遭難の原因はおそらく闇下で黒谷左岸尾根を下降中に誤って滑落してしまったと思われますが、年齢と3年のブランクを考えると雨乞岳から御在所の周回は無理があったのではないでしょうか。
あと、捜索がこれだけ難航したのは、行先を家族に告げていなかった点につきます。やはり、登山計画書、ヘッデン、合羽などの必要最低限の装備、無理の無い行程、といった当たり前の事を当たり前に行う事が、たとえどんなベテランであっても必要だと改めて思いました。