※ヤブコギネットオフ会等で何度かご一緒した事のある、緑水さん(76才男性)が4/26に登山に行き遭難し、5/2山仲間の捜索により残念な形で発見されました。このような事故が少しでも減るように、私が経験した事を共有化します。
<4/30 捜索全体の状況>
今回は三重、滋賀双方の遭難対策協議会が動いておらず、消防・警察等の公的機関による捜索隊の他は、緑水さんの知人による勝手連的な感じ。
緑水さんは山岳会には属さず、いろんなグループのメンバーと山に行っていたようです。なので、多くの人が捜索に駆けつけてくれましたが、お互いに面識のない人も多く、連携が上手く出来ているか不安に感じました。私の知っている範囲では"ヤブコギネット"のメンバーと”つばやさん”のグループが民間捜索隊の主力になっています。
本来であれば統括するリーダーが捜索範囲の割り振りを行い、重複したり空白区間が出来ないようにするのが理想だけど遭難捜索に慣れた人なんていないので致し方ないでしょうか。
<遭難場所についての考察>
今回は予定コースを誰にも告げていないので推定するしかありません。車の停まっていた武平峠は御在所、雨乞岳、鎌ヶ岳への登山口になります。また、コクイ谷を歩けば愛知川上流部の上水晶谷出合付近(鈴鹿の上高地)への行く事が出来ます。ただ、茨谷は武平峠のトンネルから少し西側なので、やはり雨乞岳へ向かったと考えるのが順当でしょうか。
「きれいな沢を見に行く」というキーワードがあったので、野洲川本流や水量谷、ロクロ谷も頭に浮かびましたが、車と入渓点が離れていたり、小型犬を連れていては超えるのが困難な滝があるので対象からは外しました。
遭難の状況ですが、鈴鹿の山を熟知している事から道迷いは考え難いと思いました。また、負傷していなければ翌日にも下りてきていると思われます。
なので、
①滑落して負傷し動けなくなっている。
②下山が夜間になってしまい、道を外し、ビバークするも低体温で動けなくなっている。(26日の夜は前線が通過し、雨が降っている)
の2ケースを想定しました。
①の場合は谷筋にいると思われ、②の場合は登山道中に分岐している支尾根が怪しいと考えました。
<捜索の状況>
前日に捜索に参加出来なかった"とっちゃん"と二人で捜索に入る事します。
今日はヤブコギネットメンバーも共同での捜索は行わないらしいので、本部で警察、消防の捜索ルートを確認し、まだ人が入っていない稲ヶ谷を調べる事にしました。
稲ヶ谷の下部は以前入った時の記憶が全く当てはまらない程荒れていました。大滝の巻き道も不明瞭で薄い道型と所々にあるFIXロープで何とか歩く事が出来ました。巻き道は滝の随分手前からつけられているので、ゴルジュに落ちていたら見つけられません。今日も沢装備で来るべきだったかな?
2012年の稲ヶ谷の記録
大滝手前の様子(この辺から右岸を巻く)
傾斜の緩い植林帯に入ったらほっと一息ですが、再び谷に戻る所で崩壊箇所があり、ちょっと緊張しました。頭上をヘリが低空で飛んで行きます。ひょっとして我々を遭難者と間違えたのかもしれません。
一応道標もある
標高800mを過ぎると谷も広くなり傾斜も落ち着いてきます。こんな場所で怪我をして動けなくなる事は確率としては低いですが、岩陰や木の陰に注意しながら歩きます。源頭部の笹もずいぶんと背が低くなり明るくなった気がします。
穏やかな源頭部
急傾斜を一登りすると東雨乞岳と雨乞岳の鞍部に出ます。稲ヶ谷への分岐は笹薮の中にはいらないといけないので、意図的に稲ヶ谷を選ばない限り、入っている可能性は低く、車の位置からしてそれは無いなという話になりました。
東雨乞では360°の展望が広がります。今日が捜索で無かったらどんなに気持ちいいでしょうか。緑水さんはいったいどこにいるんだろう・・。
鞍部に出た(雨乞岳方面)
東雨乞岳に登り返す
杉峠からイブネクラシの台地
愛知川源流方面
御在所、鎌方面
休憩しているとヘリの爆音が下から聞こえます。音の方に目をやると滋賀県の防災ヘリが谷筋を舐めるように低空飛行しています。後で聞いた話では赤外線センサーでワンコを探していたとの事。稲ヶ谷では我々の体温を検知していたのかもしれません。
低空で飛ぶヘリ
帰路は群界尾根を三人山経由で下って行きます。途中、迷い込み易い支尾根を見に行きましたが、遭難する可能性は低いなあという感じでした。
結局今日も手掛かりなし。消防警察の方でも手掛かりなしの様でした。既に72時間以上経過し、状況はどんどん厳しくなっています。これだけ手掛かりが無いと長期戦になるかも・・。そんなことを考えながら帰路に着きました。
<コース>
稲ヶ谷登山口(6:45)~稲ヶ谷~雨乞岳・東雨乞岳鞍部(9:50)~東雨乞岳(10:00)~茨谷雨量計(13:45)
今回の捜索ルート